抄録
新潟県魚沼丘陵の段丘砂礫層分布域の直径2m, 深さ約3mの人工かん養施設で, 1日10時間×5日間の人工かん養試験を2回行い, トレーサー試験, 中性子水分検層, 地下水面付近のラドン濃度測定からマクロポアの卓越流の実態を調査した. 1回目の試験におけるトレーサー試験では, 地下水位の上昇がかん養開始から2.5時間後, トレーサーの到達が3.5時間後, トレーサーピークが9.5時間後に観測された. 2回目の試験における中性子水分検層では, 不飽和帯の体積含水率は数%のオーダーで浅層から深層にかけて徐々に上昇した. 体積含水率の増加域は, 飽和透水係数の違いを反映して, 深度6m以浅では0.9m/h, それ以深では2.6m/hで下降した. 地下水位はかん養開始6時間後から上昇を開始したが, 地下水面付近のラドン濃度はかん養開始7時間後から漸減した. これらの調査結果から推定される卓越流の降下速度は, 飽和透水係数から推定される降下速度の3倍程度であった. 地下水位が上昇し始めた時間は, マクロポアを流れるトレーサーやかん養水が毛管帯に達した時間と推定された.