2007 年 48 巻 1 号 p. 15-26
山口県内の油谷・周南・柳井の3地域を例として, 第三紀層・結晶片岩・片麻岩-花崗岩地帯地すべりの地形・地質の性質を相互比較し, 各地すべり地帯の広域的特徴とその発達過程の違いについて考察した. その際, 地すべり地が複合して集合体を形成することに着目し, その集合様式により, 単独型と複合型 (親子型・並列型・群集型) の地形タイプに区分した. また, とくに個々の地すべりユニットの重複関係から, 各地形タイプの発達史の復元を試みた. 油谷地域には, 第三紀層分布域の概ね全域に, 緩傾斜の基岩構造に規制された単独型および複合型の大型地すべりが発達する. これらは単独型地すべりを原型として, 親子型および並列型の複合型地すべりへと移行する. 周南・柳井地域には, 浸食谷に沿って集積した崩積土中に, 中小規模の地すべりユニットが集合した群集型地すべりが多数存在する. 周南地域は結晶片岩, 柳井地域は片麻岩および片麻状花崗岩という基岩地質の違いに応じて群集形態は異なるが, 両地域とも油谷地域に比べ急傾斜で崩壊的な要素を含む地すべりが多い.