応用地質
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地下花崗岩体の変質とその形態
産総研岡山応力測定用深部花崗岩コア試料の変質を例に
吉田 英一西本 昌司長 秋雄山本 鋼志勝田 長貴
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2008 年 49 巻 5 号 p. 256-265

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抄録

地下における花崗岩の変質プロセスを解明することを目的に, 岡山市で掘削されたボーリングコアの深さ約100mまでについて, 割目帯近傍における花崗岩中の造岩鉱物の変質状態を調べた. この花崗岩は, 粗粒の石英, 正長石, 斜長石, 黒雲母などからなり, 割目帯に沿って水-岩石反応により形成されたと思われる変質帯が伴われる. 今回, 地下40~50m付近の変質帯を伴う割目帯を詳細に調べた結果, 斜長石の絹雲母化と黒雲母の緑泥石化は割目帯や深度と関係なくコア全体に確認することができた. また, 割目帯の近傍ほど斜長石のスメクタイト化と水酸化鉄の沈殿が明らかに進行しており, 割目帯内部では黒雲母の一部がバーミキュライト化していた. 一方で, カリ長石には変質はほとんど認められない. これら造岩鉱物の変質状態の組み合わせは, マグマ貫入後の冷却に伴う熱水変質と, 割目帯から浸透した比較的低温の天水による変質の2ステージのプロセスによるものと考えられる. このような段階的プロセスは, 地下花崗岩の鉱物変化と化学組成変化の解釈に広く適用し得るものと思われる. また造岩鉱物を用いた変質プロセスの解析手法は, 地下花崗岩の水-岩石反応履歴の解明と地下環境の理解において有効であると考えられる.

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© 日本応用地質学会
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