本研究は,自主性をはじめとする教師の主観に頼りがちな情意的教育目標の達成度を客観的に測定することにより,それらを育成するための有効な方法論を確立することをめざした実証研究の第一弾である.中学校教育現場においては,教育目標としてしばしば主体性や自主性という言葉が用いられる.主体性とは,学校教育の中で,子どもたちが何ものにもとらわれずに自らの言動の主体として自己決定する態度や,自ら課題を選択・判断する力を意味する.しかし,これまでの先行研究[1]において,これらの力を学校教育の中で育成することは極めて困難であることが明らかにされてきた(井上・林,2003).学校社会で子どもたちに求められるのは,教師があらかじめ設定した課題や役割に対して積極的に取り組む姿勢や態度である.それはむしろ主体性と言うより,自主性と呼ぶ方が適切であると考えられる.本論文では,中学校において,生徒の自主性を測定するため,20の質問項目からなる100点満点の尺度を構成した手続きと,今後の研究の方向性について述べた.