教育情報研究
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障害のある子どものためのアシスティブ・テクノロジー・コンシダレーション方法の開発
大杉 成喜
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2009 年 25 巻 3 号 p. 15-27

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抄録

特別支援学校教員,とりわけ肢体不自由児の教育を担当する教員のICT活用指導力の向上において,障害に基づく種々の困難を改善・克服する「自立活動」とアシスティブ・テクノロジー(AT)について考えることは重要である.AT先進国である米国では,障害に応じたICT個別利用指針策定のための考慮(ATコンシダレーション)が法に定められ実施されている.ATコンシダレーションを効果的に行うためには,指導者の専門性の向上に加え,個別の指導計画策定チームによる問題解決を支援する方略が必要である.その支援のツールとしてATコンシダレーション・シートが活用される.本研究では肢体不自由特別支援学校において,障害に応じたICT個別利用指針の策定力向上を目指した協議方法の開発・試行を行った.まず,「教員のICT活用能力のチェックリスト」(文部科学省)について,特別支援学校版(肢体不自由)を試作し,その項目について検討を行った.次に,従来型の協議と,手順に従って話し合いを進める協議を記録するATコンシダレーション・シートを開発し,現職教員によるATコンシダレーション演習を実施した.「話し合いの内容の評価規準」をもとに評価を行った結果,手順に従って話し合いを進める協議方法が有効であった.適切なATコンシダレーション・シートの利用により,策定した障害に応じたICT個別利用指針を,個別の指導計画における「自立活動」の項に反映させることで,ATによる支援を容易に実施することができ,特別支援学校教員およびチームとしてのICT活用指導力の向上が期待できる.

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