抄録
本研究では,「児童は単純な表やグラフ等の情報を読み取ることができるが,代表値等についての理解が十分ではない傾向にある」と「児童は単純な表やグラフ等の情報を批判的に読み取ることができない傾向にある」という児童の統計的リテラシーに関する2点の課題について,算数科の教科書に見られる問題を解くのに必要な統計的リテラシー項目をWatsonらによる基準に則り分類することによって,その要因を見出すことを試みた.その結果,前者は,グラフや表などの統計図表を用いたり読み取ったりする項目の割合が高い一方で,代表値等を理解する項目の割合が低いことに起因し,後者は,批判的思考力に関する項目の割合が低いことに起因することが明らかになった.このことから算数科の教科書に見られる問題を解くのに必要な統計的リテラシー項目の割合の変動は,児童が学習する統計的リテラシー項目の内容の定着度に影響を与えていることが示された.