抄録
保健師が効果的な保健活動を行うためには,保健統計に加えて地域特有の年齢階層別人口や社会資源の位置などの地理的情報が必要である.そこで本研究では,保健師を目指す学生が地域の状況を把握する手段を学べる機会として,保健師課程における地理情報システム(GIS)を活用した地域診断カリキュラムを考案し,実践した.対象は,A大学の保健師課程科目を履修する3年生64名であった.学生は,地域診断の概要および進め方を学んだ後,マニュアルに沿ってGISによる演習を行い,地域診断にGISを活用したグループワークに取り組んだ.その結果,地域に根差した健康課題の特定,活動計画の立案ができていた.全員の課題レポートの内容分析からは,今回の地域診断へのGIS適用において,学生は直接的なハウツーから保健師活動への理解まで把握が及んでいたことが確認された.今後,一連の保健師課程カリキュラムにおける連続性の強化と更なる体系化が望まれる.