抄録
本研究では, 手書きの能力の発達について基本的な調査研究の1つとして, ある1人の少女が小学校6年間にわたって, ほとんど毎日手書きした短い日記文章を調査対象として, どのように手書きによる漢字の能力を獲得し発達してきたか分析した. その結果, 1回の日記文章は100文字程度と短いながら, 30日間を通して点検すると, 次のような傾向が明らかになった. (1)文章に含まれる平均の漢字使用率は1, 2年生は数%である. (2)それに対して3年生以上では, 約15%から30%近くの範囲になる. (3)当該学年の学習漢字の数と種類は, 学年が進行するに従って低下する. (4)ただし前学年までに学習した漢字を使用する比率も, 学年進行と共に低下するなどの点が明らかになった.