抄録
本研究は, 集団スポーツを教材とした中学, 高校の体育授業を対象に, 生徒の体育授業に対する愛好的態度が学習行動にどのように影響を及ぼすか, さらにどのような学習場面で影響を与えるかについて検討した。その結果, 次の諸点が明らか大友・清藤・高橋・岡沢・米田・沢田・谷: 生徒の体育授業に対する愛好的態度が集団スポーツの学習行動に及ぼす影響になつた。
(1) 生徒の体育授業に対する愛好的態度は, 体育授業中の学習行動に影響を及ぼすことが明らかにされた。「運動のALT」と「主運動のALT」に影響を及ぼすことが認められた。体育授業に対する愛好的態度の高い生徒は積極的に運動学習に従事し, 高い割合の「運動のALT」を獲得するが, 体育授業に対する愛好的態度の低い生徒はそれらのカテゴリーに低い値を示し, 運動学習への成功裡な従事行動は少ないことが明らかにされた。
(2) 生徒の体育授業に対する愛好的態度は, 練習場面での学習行動に対して有意な影響を及ぼさなかつた。
(3) 生徒の体育授業に対する愛好的態度は, ゲーム場面での学習行動に影響を及ぼすことが明らかにされた。ゲーム場面での「待機」「運動での反応」「主運動のALT」に影響を与えていることが認められた。体育授業に対する愛好的態度の高い生徒は, ゲーム場面で積極的に運動学習に従事し成功をおさめているが, 体育授業に対する愛好的態度の低い生徒は, 積極的に運動学習に従事せず, 待機する行動が多いことが明らかにされた。
生徒の体育授業に対する愛好的態度という特性が, 授業中の学習行動としてどのように現れるのかを明らかにすることができた。今後, 体育授業に対する愛好的態度がどのような授業の変数に影響を与えているのかを明らかにし, その変数を媒介として体育授業に対する愛好的態度の低い生徒がより積極的に学習に参加する方法を介入実験的研究によつて明らかにしていく必要がある。