スポーツ教育学研究
Online ISSN : 1884-5096
Print ISSN : 0911-8845
ISSN-L : 0911-8845
7秒間のペダリング運動からみた児童・生徒の無気的パワーの発達
谷口 裕美子寺本 祐治麻場 一徳油野 利博高松 薫
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 15 巻 2 号 p. 99-107

詳細
抄録

本研究では, 小学校4年生から高校3年生までの男女児童・生徒を対象にして, ペダリング運動からみた無気的パワーの発達のしかたをレベルとタイプの両面から, 年齢, 性および発育の遅速の指標である身長と関連づけて検討した。この課題を明らかにするために, 被験者に4種の負荷による7秒間の全力ペダリング運動を行わせ, 各負荷における体重あたりのピークパワー (Peak power/BW) と最高回転数, および各負荷における最高回転数 (Y) を負荷 (X) に対する一次式 [Y=a-bX, Y/a=1-(b/a)X] に近似させた場合のb/aを求めた。無気的パワーのレベルの評価には, 4種の負荷における体重あたりのピークパワー (Peak power/BW) を用いた。また, 無気的パワーのタイプの評価にはb/aを用いた。なお, ここでは, b/aが小さいほど力型の無気的パワーに優れ, 大きいほどスピード型の無気的パワーに優れているとみなした。おもな結果はつぎのとおりである。
(1) Peak power/BWは, 男女ともに, いずれの負荷においても小学校4年生から中学校1・2年生にかけて著しく増大した。男子が女子と比較して, いずれの負荷においても有意に高いPeak power/BWを示したのは中学校2年生からであった。また, その差は負荷が大きいほど大きい傾向にあった。
(2) Peak power/BWは, 男女ともに, いずれの負荷においても身長が高くなるにつれて増大した。しかし, 男子は女子と比較して, 身長が高いほど, あるいは負荷が大きいほど高いPeak power/BWを示す傾向にあった。また男女ともに, 身長が高いほど, あるいは負荷が大きいほどPeak power/BWの個人差は大きくなったが, その個人差は女子が男子に比較して大きい傾向にあった。
(3) b/aは, 男女ともに, 小学校4年生から中学校2・3年生にかけて著しく低下し, その後は高校3年生まで男子はほぼ同じ水準を保ち, 女子は徐々に低下する傾向にあった。このことは, 思春期前には無気的パワーのタイプがスピード型から力型へ移行することを示す。また, 男子は女子と比較して, 中学校2年生以降において有意に低いb/aを示し, 力型の無気的パワーに優れていた。
(4) b/aは, 男女ともに, 身長が高くなるにつれて低下した。このことは, 身長の増大とともに無気的パワーのタイプがスピード型から力型へ移行することを示す。しかし, 身長の低いL群, 中位のM群, 高いH群のいずれの群においても, b/aおよびその個人差には顕著な性差はなかった。なお, b/aの個人差は, 男女ともにいずれの身長群においてもかなり大きい傾向にあった。
上述の結果は, 無気的パワーからみた運動適性 (タレント) の測定評価法と無気的パワーづくりの方法を, 年齢, 性, 身長などと関連づけて確立していく場合の基礎的知見になると考えられる。

著者関連情報
© 日本スポーツ教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top