スポーツ教育学研究
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子どもからみたダンス授業評価の構造 -中学校創作ダンス授業に対する評価の分析から-
松本 富子高橋 健夫長谷川 悦示
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1996 年 16 巻 1 号 p. 47-54

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抄録

子どもからみたダンス授業の評価構造を明らかにすることを質問紙法によって試みた。28項目のダンス授業評価項目を作成し, 創作ダンス授業単元に参加した中学生1・2年生407名 (男子87名, 女子320名) に対して調査を実施した。
(1) 中学校の子どもからみたダンス授業評価の観点として「おどる・つくる」, (2)「わかる」, 「とりくむ」, 「かかわる」の4因子が抽出された。これらの評価観点について総括的な授業評価の「よい勉強」と「よい授業」の2項目との基準関連性を検討した結果, 有意な正の相関を示した。また, これらの評価観点は, 高田らや高橋らの総括的評価法, 形成的評価法の評価観点とほぼ符合するものであった。
(2) 情意的学習目標である「楽しさの体験」および「ダンスへの愛好的態度」とダンス授業の4つの評価観点との関連性を検討した結果, 次のような特徴的な違いがみられた。短期の情意的目標である「楽しさの体験」には, 「かかわる」と「とりくむ」の2つの評価観点のみが有意な関連性を示したのに対して, 長期の情意的目標である「ダンスへの愛好的態度」の形成には, 4つの評価観点のすべてが有意に関連していた。したがって, 楽しさという心理的体験を越えて, 学習者が生涯にわたってダンスの運動文化を享受する性向と能力を育成するためには, 「おどる・つくる」, 「わかる」, 「かかわる」, 「とりくむ」の4つの評価観点の学習が重要であることが示唆された。
以上の結果から, ここで得られた4つの評価観点が, ダンス授業をよりよく理解し, 改善するための有益な示唆を提供する評価観点であると判断できる。

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