スポーツ教育学研究
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スポーツの授業における知識テストに関する指導技術
村上 恭子
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1983 年 2 巻 p. 33-39

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抄録

従来, 「テスト」という用語から来るイメージのひとつには, どこから出題されるのかわからないという秘密性の要素が含まれていたと思える。しかし高校生のスポーツの授業について, 公開性の原則を採用した知識テストを行った結果, 客観的には得点の上昇となって現われた。また, 概観したところでは, 生徒のスポーツの授業への取り組みが真剣になったように思える。例えば, 3年生でクラスの最高点を取った生徒は, 「高校入学以来, 数多くのテストの中で, このテストの点が最高だった」ともらした。その後, 彼女は授業中さわがなくなり, 授業への取り組みには, まじめさが見え始めたのである。
要するに, スポーツの授業で何が要求され, 何を学習しようとしているのか, そして, それが生徒自身とどのように係るのかと言う授業の骨組みや構造が生徒にも見えて来たことが効果をあげた原因のように思える。従来, 落ちこぼれで, 授業中何も理解できないまま耐えて来た生徒たちにとって, スポーツの授業で何かが見えて来たと言うことは, 自己信頼の回復の発端となっているように思える。そして, 特に3年生では, 個人のみならず, 集団の自信回復のきざしが見うけられるように思える。これらは, 公開性の原則が契機となった波及効果であると言える。
以上のことから, 公開性の原則に基いた知識テストのスポーツの授業への導入は, 本研究の対象校においては, スポーツの授業をより効果的に展開する上に有効であったと言える。
今後の課題としては, すべての生徒に100点に近い得点をとらせる方法や, うきこぼれの生徒に対するテスト方法, そして, テスト実施に関して教科内での統一見解の必要性が考えられる。さらに, 実技テストに関しても公開性の原則が導入可能か否かを検討してみたいと思う。

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