スポーツ教育学研究
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Alternative Paradigm for Research and Practices in Physical Education Teacher Education
Sinbok KANG
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2004 年 24 巻 2 号 p. 117-124

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抄録

良質の体育授業は体育教師教育がうまく行われているかどうかを判断するための適切な評価指標であるという、このあまり耳慣れない前提条件から話を始めたい。これら二者は、常に不可分に結びついている。その結びつきは、ゆるやかなものであるかもしれない。しかし、両者は不可分に結びついている。良質の体育教師教育は、良質の学校プログラムを必ず生み出すものである (Siedentop & Locke, 1997, p. 25)。
学校体育の危機 (Kirk & Tinning, 1990; Lawson, 1998; Placek, 1992; Sage, 1993; Tinning & Fitzclarence, 1992) に伴い、体育教師教育 (PETE) に対する関心が高まっている。シーデントップとロックが指摘したように、学校体育の危機は体育教師教育の危機と不可分に結びついている。
体育関係の研究は、教科指導の専門家しての体育教師という伝統的な教師像に修正が迫られていることを示している。そのような教師像に対して否定的な見解が社会的に示されていることが、その理由である。教師達は、暴力やモノの使用 (substance use)、ギャングへの加入等の様々な問題にさらされている生徒の増加に頭を悩ませている。そのため、体育教師達は、単に教科指導の専門家であるだけではなく、それら新たな諸問題に責任をもって対応のできる専門職となることが期待されている (Chen, 1999)。体育の授業中に生徒達が示す抵抗に対応できることもまた、新たに突きつけられている課題である。基本的な権威者 (primary authority) としての教師という伝統的な見解は、変化してしまった。生徒が体育に対して抵抗を示すようになったことで、カリキュラムについて生徒と教師が合意を得ていくために意見交換がなされるようになった (Ennis, 1995)。
シーデントップとロック (1997) によれば、我々は現在、公立学校における体育と高等教育機関における体育教師教育の関係に誤りがあることを示唆する「システム上のエラー」に直面している。この危機を解消していくためには、現時点で展開されている体育教師教育の実態を詳細に検討していくことが極めて重要である。
本研究の目的は、体育教師教育の歴史を振り返り、体育教師教育を質的に改善していくための実践的方法を探ることにある。この目的達成に向け、本研究は三部で構成される。第一部では体育教師教育にみられた技術主義的な伝統とそれに変わる代案としての批判的/反省的な体育教師教育の歴史が手短に確認される。第二部では、体育教師教育を通して批判的/反省的な専門職を養成するための実践的方法が紹介される。第三部では、今後の研究並びに実践の方向性について検討していく。

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© Japanese Society of Sport Educaiton
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