スポーツ教育学研究
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大学生のスポーツ参加を規定する要因
入口 豊高橋 健夫内山 憲一
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1984 年 3 巻 2 号 p. 49-58

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抄録

大学生のスポーツ参加 (スポーツクラブ参加, スポーツ実施度) を規定する要因を検討することを目的に, 関西地区7大学の男女学生1,575名を対象に実施した調査結果をSPSSプログラムパッケージによって分析した結果, 上記の対象の範囲で次の結論を得た。
1. スポーツクラブ参加者は, 全対象者の44%であり, その割合は男子の方が高い。
2. 全体の半数以上が, 体育の授業以外に週に数日はスポーツを行なっており, その比率は男子の方が女子よりも高い。
3. スポーツクラブ参加率, スポーツ実施程度ともに, 国立大学の方が私立大学よりも高い。
4. スポーツ実施程度は, スポーツクラブに参加しているか否かによって決定的に規定される。
5. 大学生のスポーツ参加を規定する主な要因は, 主体的要因 (スポーツに対する愛好的態度, スポーツ意識, 体力, 技能など) と大学の要因 (国, 私立別, 学部) であり, 他の社会的, 経済的条件の影響は受けない。
要するに, 大学生のスポーツ活動は, 学生の所属する大学の条件 (国・私立や学部) によって若干の相違は見られるが, 一般社会人と異なり, 一定のお金と暇を所有した上で展開されているため, 本人さえその気になればいくらでもできる状況にあるわけで, スポーツに参加するか否かも, 他の社会的条件に左右されることは少なく, むしろ大部分が学生自身の意志によって決定されるといえよう。
従って, 大学生が余暇時間にできうるあらゆる活動の中で, その上位にスポーツをランクするかが問題となるが, これは大学入学以前, すなわち高校までの間にスポーツに対する愛好的態度を身につけているかどうかにかかっているといえよう。特に, 高校卒業時までに最低一種目は特意なスポーツの技能を身につけておくことが必要であり, この自信があれば, たとえ種目が変わったとしても新しい種目にすぐ順応していけるであろう。このためにも, 従来のような小, 中, 高の細切れのスポーツ指導ではなく, 段階的で一貫したスポーツ教育が考えられなければならないであろう。最近注目を集めている高校体育での種目選択制の導入等についても真剣に取り組む必要があろう。
また, 本研究では, 大学生のスポーツ参加が何らかのスポーツサークルや組織に加入することによって決定的に左右される現実が明らかになったが, このことは, 学生がスポーツに対する愛好的態度を有し, スポーツをやろうという意志を持っていたとしても, それを受け入れられる身近かなスポーツ組織がなければ学生のスポーツ活動促進につながらないことを示している。すなわち, 施設や金銭といった物質的な条件よりも, 一緒にスポーツができる仲間の存在こそが最も重要な要素となっているということができよう。
スポーツが大衆化し, スポーツの概念が幅広く捉えられるようになってきた今日では, 学生のスポーツの目的やあり方や楽しみ方も多種多様であって然るべきであり, チャンピオンシップ志向のもの (体育会系の運動部) とレクリェーション志向のもの (同好会, 愛好会等) が, 二極分化するのではなく, むしろ共存していけることが望ましいと言えよう。従って, 広い意味での学生のスポーツ参加を促進していくには, 大学や地域のスポーツサークルのあり方を検討し, チャンピオン志向の運動部だけではなく, 誰もが気軽に加入できて, スポーツを楽しみとして続けていけるような組織を形成していくことも大きな課題であるといえよう。

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