スポーツ教育学研究
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ALT-PEシステムを用いた体育科の授業分析に関する研究
鈴木 宰梅野 圭史辻野 昭
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1985 年 4 巻 2 号 p. 59-70

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抄録

アメリカ・カナダにおいて使われているALT-PEシステムを静岡県駿東地区の10中学校における20クラスに適用された。ALT-PEについて, ケベック州・オハイオ州における成績と比較するとともに, 「教材編成」, 「教授活動」, 「学習集団」などの学習形態との関係を見ることから, ALT-PEを高めるための条件を明らかにし, 体育授業への適用の可能性が検討された。
結果は次の通り要約された。
1) ALT-PEは27.65%-87.2%の範囲にあり, 平均62.4%であり, ケベック州およびオハイオ州における値より著しく高い傾向が示された。
2) ALT-PEの成績の順に授業を並べると, 上位4クラスは, ALT-PEで82.6%-87.2%の範囲で, 「系統的教材編成 -提示・説明的な教授活動-一斉的学習集団」による授業で説得的発言 (発問・指示) が多くみられ, いわゆる教師の指導性 (制御) のきいた授業が多いことが推察された。
3) 中位8クラスは, ALT-PEで58.6%-79.8%の範囲で, 「課題解決的教材編成-探究・発見的な教授活動-小集団的学習集団」による授業で発問に関する発言が多くみられ, いわゆる学習者の主体的活動を尊重する授業が多いことが推察された。
4) 下位8クラスは, ALT-PEで27.65%-53.6%の範囲で, 「系統的教材編成-提示・説明的な教授活動-一斉的または小集団的学習集団」による授業で, 指示的発言または叱責に関する発言が多くみられ, 放任的あるいは雰囲気のよくない授業が多いことが推察された。
以上の結果, ALT-PEシステムは, 高次目標に重点をおいた課題解決的学習よりも, 基礎目標に重点をおいた系統的学習の方がALT-PEを高めるという特性をそなえているが, カテゴリーの工夫によっては, 高次目標の授業でもALT-PEを高める授業分析システムに成りうる可能性があると考えられた。しかし, このシステムは60%前後を臨界点とすれば, 学習目標・学習形態にかかわらずわが国においてそのまま授業診断の方法として適用に耐えるものと考えられた。

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