スポーツ教育学研究
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鉄棒運動における腕立て前転の筋電図的研究
岡 秀郎
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1987 年 7 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

1. 器械体操経験者から初心者に至る成人男子7名を被験者とし, 鉄棒の腕立て前転を行わせ, 動作並びに筋の作用機序の面より, 運動構造並びに習熟過程について検討し, 腕立て前転の技術的ポイントを明確にせんとした。
2. 熟練者の場合は回転開始後, 一時的に股関節の伸展動作を行い, 股関節の角度変化を有効に利用して腕立て前転を成功させているものと考えられる。一方, 非熟練者の場合は股関節の屈曲動作に加えて, 上体の鉄棒真下通過前後, 上肢・上肢帯筋による引き動作を行い, 腕立て前転を成功させているものと考えられる。
3. 技術解説書等で強調されている回転後半の手首の返し動作, すなわち, 手関節の屈曲動作は熟練者の場合には観察されず, 非熟練者においても, 観察される場合とされない場合があった。いずれにせよ, 回転が滑らかに行なわれた場合には, 手首の返し動作は必らずしも腕立て前転を成功させるための技術的ポイントとは成り難いものと考えられる。
4. 腕立て前転が出来なかった者に, これまでの解析結果を基に練習させた。その結果, 回転の前半, 股関節角度が維持出来るようになり, 腕立て前転に成功した。その内, 1名の被験者については, 非熟練者に類似した放電様相の出現が観察されるようになったが, 他の1名については, 上肢帯筋および躯幹筋に余分な筋緊張が残存した。

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