発話に対する不安が吃音を増強するかどうかを検証するため,吃音症状のある16名とない15名を対象に,実験室の外とつながる電話を活用した実社会に近い場面と実験室内の1対1の対面場面を設定して図形を説明する課題を行った。心理的指標としてSTAIによる状態不安,生理的指標として皮膚電導度(EDA)を計測し,吃音頻度と非流暢度との関係を解析した。その結果,吃音群では対面場面より電話場面で吃音頻度とSTAIが相関して上昇し,状態不安と吃音頻度との関係が有意であることが示された。主成分分析では吃音頻度の上昇にも軽減にも関連する主成分がEDAに含まれていることが示された。一般化線形モデルを活用した分析結果からは,状態不安が高い電話場面でのEDA上昇は吃音頻度の上昇に,状態不安が低い対面場面でのEDA上昇は非流暢度の減少に関連することが示された。これらの結果は状態不安の軽減が吃音頻度の軽減に関連する可能性を示唆する。
In this study, the possible relationship between anxiety and stuttering during two real-life speaking situations—talking on the telephone and face-to-face conversation—was examined using quantitative measures. For two groups of participants—16 adults who stutter (AWS) and 15 adults who do not stutter (ANS), the state-trait anxiety (STAI) and the electrodermal-activity (EDA) were measured, and their relationship with stuttering and disfluency frequencies were analyzed using a principal component analysis and a generalized linear model. Results revealed only the AWS group, not the ANS group, demonstrated significantly higher anxiety and autonomic arousal during the telephone task than the face-to-face task. Two different principal-factors were found in EDA: one correlates with increase of stuttering frequency, the other with decrease of it. The optimal generalized linear model of stuttering frequency indicates that increase of EDA during telephone conversation, which induces high state anxiety only for AWS, correlates with increase of stuttering frequency, while increase of EDA during face-to-face conversation, which induces low state anxiety for AWS, correlates with decrease of disfluency. These findings suggest that reduction of the state anxiety may have positive effects on stuttering symptoms.
吃音のある人は発話が避けられない状況を予期した段階で不安(予期不安)を感じ,それが吃音を増強するという報告(Caruso, Chodzko-Zajko, Bidinger, & Sommers, 1994;Weber & Smith, 1990)がある一方で,予期不安は吃音の主因でも増強要因でもないという研究報告(Alm, 2004;Blood, Blood, Frederick, Wertz, & Simpson, 1997;Brunner & Frank, 1975;Peters & Hulstijn, 1984)がある。例えば,Peters and Hulstijn(1984)は発話課題や非言語課題を実施したときの心拍や皮膚伝導率を調べた結果に基づき,緊張する発話課題で吃音者・非吃音者とも同様の変動パタンを示すので,不安は吃音の原因ではないと結論している。Alm(2014)は多くの先行研究を検討した結論として,「吃音のある幼児では社会的不安が共通の特徴とは言えない。非流暢性の結果として社会的不安が増強される。不安軽減は吃音の軽減には繋がらない。」と述べている。
一方,不安と吃音の関係の重要性を指摘する報告も少なくない。Van Riper(1982)は吃音の重症度を増強要因と減弱要因の比で表現できるとし,増強要因のひとつとして不安を挙げている。Iverach and Rapee(2014)は成人吃音者のほぼ1/4が社交不安障害を持っており,吃音を悪化させる要因になっている(Iverach et al., 2017)とし,吃音に関連する多くの否定的な認知や思い込みを包括的に評価するアンケート(Unhelpful Thought and Beliefs about Stuttering, UTBAS)を開発して,吃音の評価や治療に有効であることを示している。UTBASの日本語版も開発され有効性が確認されている(Chu, Sakai, Mori, & Iverach, 2017)。また,Yang, Jia, Siok, and Tan(2017)は休息中と発話中の脳神経の機能的結線性を調べ,吃音者では発話不安に応じて発話中の機能的結線が変化することや,非吃音者とは異なる機能的結線性を示すことを確認し,不安が吃音者の発話機構を変える可能性を指摘している。
このように不安と吃音の関係は肯定と否定が交錯しており,一致した結論には達していない。そこで,本研究では,発話に対する不安が吃音を増強するかどうかを精査するため,実験室の外とつながる電話を活用し,実社会に近い場面を設定して,不安に関連する生理的,心理的指標と吃音との関係を定量的に解析した。生理的指標として皮膚伝導度(electrodermal activity,以下EDAと略記)を,心理的指標としてSTAI(肥田野,福原,岩脇,曽我,Charles, 2009)を使用した。
皮膚伝導度は不安に伴う発汗の影響で変化する皮膚の電気伝導率を計測する方法である。吃音と不安の関係を調査する研究でもしばしば使用されてきた(Bowers, Saltuklaroglu, & Kalinowski, 2012;Brunner & Frank, 1975;Dietrich & Roaman, 2001;Weber & Smith, 1990)ものの,注意すべきは発汗が不安だけに伴う現象ではなく,体温やその日周リズム,脱水や飲水,風邪などの感染症や精神疾患,局所血行,表皮の湿潤など様々な要因に影響されることである(小川,1988)。また,注意をひく刺激や注意を要する課題遂行においてもEDAは上昇することが知られている(Poh, Nicholas, & Rosalind, 2010)。したがって,EDAの計測・解析においては,複数の要因から注目要因の影響を分離する工夫が重要になる。
吃音重症度もVan Riper(1982)が示したように相反する要因の関数で表現される可能性が高い。増強要因と減弱要因の比で表現される吃音重症度も対数など適切な変数変換によって線形化できると期待できる。そこで,本研究では,適切な変数変換を前提として,吃音頻度や非流暢度を生理的・心理的指標から予測する線形モデルを構築できると仮定した。モデルの入力変数としてEDAやSTAIの場面毎の値に加えて,場面間の変化量も含めた。こうした第一の目的は会話場面の変化に対する話者の過敏さが吃音頻度や非流暢度に影響する可能性をモデルに反映させるためであり,第二の目的はEDAが包含する可能性が高い上記のような相反要因を分離するためである。そのうえで,これらの測定値を吃音頻度や非流暢度の増減に関連する要因と関連しない要因とに分離できることを主成分分析で確認した。その結果に基づいて,広範な変数変換機能を備えた統計解析ソフトJMPを用いて,吃音頻度と非流暢度を生理的・心理的指標から予測する一般化線形モデルを検討した。
一般化線形モデルとは説明変数が目的変数に与える影響を分析するための方法を統一的に理解しやすくしたものである。伝統的に広く使われてきた回帰分析を大幅に拡張し,より広い範囲で使いやすくしたものともいえる。そのため,直線回帰や重回帰,分散分析や共分散分析といったものを特別な場合として含んでおり,説明変数も目的変数も量的なものでも質的なものでもかまわない(粕谷,2012)。今回適用した一般化線形モデルは吃音群対非吃音群のような分類名義尺度もEDAなどの連続尺度も説明変数にできるよう拡張された重回帰モデルである。モデル構築にあたっては,標本数補正を加えた赤池情報量基準(AICc)を最小にするモデルが最適であるという一般に広く受け入れられている基準に従った。
吃症状のある成人16名(平均年齢26.6±7.4歳,男12名,女4名)と,吃症状のない成人15名(27.0±6.0歳,男11名,女4名)を対象とした。県立広島大学研究倫理審査員会の許可を得たうえで,研究協力者には目的や考えられる利益,不利益など,必要事項を書面および口頭で説明し,署名をもって研究参加の同意を得た。
2. 図形伝言課題図形情報を的確に相手に伝える図形伝言課題を対面場面と電話場面で実施した。図形情報としては,円,三角形,台形,星形など7種の要素図形を,大きさ(大,中,小)や色(白,赤,青,黄,黒),配置を様々に変え,16枚のA4画像を作製した。1施行に1枚をランダムに選択して使用した。対面場面では実験室内で研究協力者が指定された図形情報を対面する実験者に説明する課題を実施した。電話場面では研究協力者が電話を介して実験室外の面識のない相手に図形情報を説明する課題を実施した。いずれの課題も図形情報の伝達が完了していない状況でも5分間で終了とし,その間の音声を録音した。使用した図形の一例を図1に示す。

星形…青,ひし形…黒,三日月…黄色,丸…赤
実験の手続きを図2に示す。「準備・説明」では実験内容を説明したのち,図3に示すように皮膚電導度測定装置Qセンサー(Poh et al., 2010)を手首に装着し,課題終了まで皮膚電導度を記録した。「対面場面」では1対1で対面する相手に図形情報を説明する課題を実施した。「電話場面」では電話を介して実験室外の面識のない相手に図形情報を説明する課題を実施した。電話を使うことについては電話課題の最初に告知した。いずれの場面でも最初に課題を再度説明して参加同意を再確認し,心理指標STAIを記入してから図形伝言を開始した。順序効果を最小限に抑えるため両場面の実施順序を研究協力者間でカウンターバランスをとった。両場面間に10分の安静時間を設けた。安静時間ではリラクゼーション用中性画像(エンドレスブルー,シンフォレスト,2004)を視聴してもらった。


左右双方に装着しアーチファクトの少ない方を採用した。
画像記録(デジタルハイビジョンカメラHDC-CD,Panasonic)を行い,吃症状と随伴症状を記録した。
心理的指標として,心理検査STAIによる特性不安値と状態不安値,特定の発話場面に対する回避と反応の自己評定値を記録した。心理指標STAIは,準備・説明時,対面課題開始前,電話課題開始前,および実験終了時の計4時点で記入してもらった。これらをそれぞれ,準備時STAI,対面前STAI,電話前STAI,終了時STAIとした。また場面に依存したSTAIの変化を調べるため,電話前対面前STAI差も求めた。
図4に一例を示したように生理的指標として皮膚電導度(EDA,単位μS:マイクロジーメンス)を計測した。準備・説明時,対面課題を告知してから対面課題実施前の間,対面課題実施中,電話課題を告知してから電話課題実施前の間,電話場面課題実施中の平均値を算出し,それぞれ準備時EDA,対面前EDA,対面時EDA,電話前EDA,電話時EDAとした。また場面に依存した変化を調べるため,電話時-電話前EDA差,対面時-対面前EDA差,電話時-対面時EDA差,電話前-対面前EDA差を求めた。

a:準備時EDA, b:対面前EDA, c:対面時EDA, d:電話前EDA, e:電話時EDA, およびe-d:電話時−電話前EDA差,c-b:対面時−対面前EDA差,e-c:電話時−対面時EDA差,d-b:電話前−対面前EDA差 を計測した。
さらに,ディジタル音声録音機(CD2CF/CD RECORDER, Roland)を用いて課題実施中の音声を記録し,Praatを使用して吃音頻度,非流暢度を求めた。
吃音頻度,非流暢度は吃音検査法(小澤,原,鈴木,森山,大橋,2013)の方法により算出した。
吃音頻度=吃音中核症状数/総発話文節数×100 (式1)
非流暢度=(吃音中核症状数+その他の非流暢数)/総発話文節数×100 (式2)
ここで,吃音中核症状数は吃音検査法の定義に従い,「音・モーラ・音節の繰り返し」,「語の部分の繰り返し」,「引き伸ばし」,「阻止」とした。その他の非流暢数は「語句の繰り返し」,「言い直し」,「中止」,「挿入」,「とぎれ」「間」を対象とした。総発話文節数は文法的に正しく発話された文節数とした。なお,5分間の発話の平均文節数は203(標準偏差62)であった。筆頭著者と言語聴覚士1名との間で吃音生起の評定の一致率を算出した。一致率の算出方法は,一致した吃音の度数/(一致した吃音の度数+不一致の吃音の度数)×100とした。一致率は93%であった。
対面時の吃音頻度,電話時の吃音頻度,電話時と対話時の吃音頻度差を求めた。さらに,対面時の非流暢度,電話時の非流暢度,電話時と対話時の非流暢度差を求めた。
5. 統計解析本報告では,吃音頻度と非流暢度の場面による変化,およびそれらとEDAやSTAIとの関係を中心に解析した。
まず,吃音頻度と非流暢度に対して,群(吃音群=AWS,非吃音群=ANS),場面(対面,電話),場面順序(対面先行=FT,電話先行=TF)を独立変数とした分散分析を行った。
5時点のEDAと4時点のSTAIに対して,群,場面順序を被験者間変数,計測時点を被験者内変数としてStatview(version4.0, SAS)で分散分析を行った。さらに,EDA,STAI,およびそれらの変化量に対してJMP(version13.1.0, SAS)を用いて主成分分析を行なった。
最後に,JMPの一般化線形モデルを用いて,吃音頻度と非流暢度がEDAやSTAIとどのような関係を持っているか解析した。吃音頻度に関しては,対面場面吃音頻度,電話場面吃音頻度,吃音頻度差(変化量)をそれぞれ従属変数とし,名義尺度説明変数として群および場面順序を,EDAの5時点の計測値,STAIの4時点の計測値を連続尺度説明変数として,AIC(赤池情報量基準)を最小化する最適な一般化線形モデルを探索した。AICとして標本数n = 31が大きくないことによる補正を組み入れたAICcを使用した。JMPの機能を活用して最適な分布関数やリンク関数を決め,すべての説明変数を与えた一般化線形モデルから始めて,有意な効果を示さない(p値が最大の)変数を順次削除していく方法でAICcを最小化する予測式を求めた。非流暢度に対しても同様の方法で最適な一般化線形モデルを求めた。
全発話データ(31名分,2課題,各5分間)の平均文節数は203(標準偏差62)であった。吃音頻度を(式1)に従って求め,分散分析した。吃頻頻度に対しては,群と場面の交互作用(F(1, 29)=10.4, p = 0.0031)が有意だった。非吃音群に比べて吃音群の方が,かつ対面場面より電話場面の方が吃音頻度は高かった。
非流暢度に対しては,群(F(1, 29)=17.6, p=0.0002),場面(F(1, 29)=30.2, p < 0.0001)の主効果,及び群と場面の交互作用(F(1, 29)=19.2, p = 0.0001)が有意だった。吃音群の方が非流暢度は高く,かつ電話場面で有意に上昇した。
2. 生理的指標と心理的指標の場面による変化図5から明らかなように,EDAは群(吃音群>非吃音群)(p = 0.0004)と測定時点(大小関係は下記の通り)(p < 0.0001)の主効果が有意で,他は有意でなかった。EDAは課題実行時に大きくなっており,吃音群では電話課題時(濃グレー)>>対面課題時(淡グレー)>電話課題前(網目)>対面課題前(斜線)>準備時(白)で,課題順序が変わっても傾向は同じであった。非吃音者では,対面場面が先行するとき,電話課題前(斜線)>対面課題前(網目),電話場面が先行するとき電話課題前(斜線)<対面課題前(斜線)の傾向があるものの,順序の主効果,交互作用とも有意水準には達しなかった。

棒グラフと先端の髭は平均値と標準誤差を示す(以下の図でも同様)
図6から明らかなように,STAIは群(吃音群>非吃音群)(p = 0.006)と測定時点(p < 0.0001)の主効果が有意で,他の効果は有意水準に達しなかった。

吃音群では電話前(網目)>対面前(斜線)>準備時(白)>終了時(濃グレー)で,電話前(網目)は電話課題を先行させるとき逆より大きく,他の時点のSTAIは対面課題を先行させたときの方が大きい傾向があった。非吃音者では,電話前(網目)=対面前(斜線)>準備時(白)=終了時(濃グレー)で,電話前(網目)と対面前(斜線)では先行する課題の方が大きめになる傾向があったものの,順序効果は有意レベルに達しなかった。
3. 生理的指標と心理的指標の相互関係主成分分析の結果, 固有値が1以上の主成分F1(固有値6.71,寄与率30.9%),F2(4.78,23.9%),F3(2.69,13.4%),F4(2.1,10.5%),F5(1.3,6.71%)が抽出され,F1~F5の寄与率総和は85.4%で,解析に使用した測定値の総分散の85.4%を説明することが示された。
表1に示すように,主成分F1の負荷量は,電話吃音頻度の0.82を最大値として,対面吃音頻度の0.77,電話-対面吃音頻度差の0.74,対面非流暢度の0.73,電話非流暢度の0.69などが大きく,また電話時EDAの 0.72,電話前-対面前STAI差の 0.71,電話前STAIの 0.70,電話時-対面時EDA差の 0.66が大きかった。
| 測定値と差分 | F1 | F2 | F3 | F4 | F5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 対面吃音頻度 | 0.77 | ˗0.45 | −0.02 | −0.20 | 0.21 |
| 電話吃音頻度 | 0.82 | −0.48 | −0.06 | −0.06 | 0.14 |
| 電話-対面吃音頻度差 | 0.74 | −0.43 | −0.14 | 0.25 | −0.04 |
| 対面非流暢度 | 0.73 | −0.42 | −0.06 | 0.01 | 0.28 |
| 電話非流暢度 | 0.69 | −0.54 | −0.02 | 0.39 | 0.12 |
| 電話-対面非流暢度差 | 0.37 | −0.45 | 0.04 | 0.65 | −0.11 |
| 準備時EDA | 0.41 | 0.64 | −0.30 | 0.32 | −0.24 |
| 対面前EDA | 0.40 | 0.70 | −0.38 | 0.34 | 0.04 |
| 対面時EDA | 0.34 | 0.81 | −0.13 | 0.28 | 0.33 |
| 電話前EDA | 0.46 | 0.81 | −0.07 | 0.23 | −0.21 |
| 電話時EDA | 0.72 | 0.58 | −0.07 | −0.35 | 0.03 |
| 電話時-電話前EDA差 | 0.67 | 0.25 | −0.05 | −0.63 | 0.17 |
| 対面時-対面前EDA差 | 0.17 | 0.68 | 0.19 | 0.12 | 0.54 |
| 電話時-対面時EDA差 | 0.66 | 0.12 | 0.00 | −0.68 | −0.22 |
| 電話前-対面前EDA差 | 0.28 | 0.52 | 0.42 | −0.06 | −0.46 |
| 準備時STAI | 0.08 | −0.04 | 0.80 | −0.08 | 0.14 |
| 対面前STAI | 0.22 | 0.18 | 0.77 | 0.18 | 0.24 |
| 電話前STAI | 0.70 | −0.06 | 0.51 | 0.15 | −0.16 |
| 終了時STAI | −0.02 | 0.12 | 0.82 | 0.10 | −0.22 |
| 電話前-対面前STAI差 | 0.71 | −0.27 | −0.14 | 0.01 | −0.48 |
解析測定値と差分の英字略字に対応する説明を,便宜上この表のように定めた。本文中で引用した数値を太字で示した。
主成分F2の負荷量は,対面時EDAと電話前EDAが0.81で最大で,対面前EDA の0.70,対面時-対面前EDA差の0.68,電話時EDAの0.58が大きかった。F2で特徴的なのは,吃音頻度と非流暢度に対して−0.54~−0.42の負の値を示した点である。
主成分F3の負荷量は,STAIに対して0.51~0.82と大きく,電話前−対面前EDA差は0.42と,正の値を示したものの,準備時EDAの−0.30や対面前EDAの−0.38は負の値を示した。また吃音頻度は−0.14~−0.02で無視できる値であった。
主成分F4の負荷量は,電話非流暢度と対面非流暢度差の0.65が最大,電話時−対面時EDA差の−0.68,電話時−電話前EDA差の−0.63が負で最大だった。
主成分F5の負荷量は,対面時EDAが0.33,対面時−対面前EDA差が0.54と正の値を示し,電話前−対面前STAI差が−0.48,電話前-対面前EDA差が−0.46と負の値になった。他は小さかった。
4. 吃音頻度に対する一般化線形モデルの結果対面吃音頻度,電話吃音頻度,電話−対面吃音頻度差に対する一般化線形モデルの結果を表 2に示した。この表で群(ANS)の回帰係数−1.17,−1.31,−0.82は非吃音群に対する値を示しており,吃音群では正負を反転させた値1.17,1.31,0.82になる。つまり,この結果は,
吃音群の電話時−対面時吃音頻度差= Exp(切片(0.33)+群(+0.82)+0.056*(電話前−対面前STAI差)),
非吃音群では電話時−対面時吃音頻度差= Exp(切片(0.33)+群(−0.82)+0.056*(電話前−対面前STAI差))
という一般化線形モデルがAICc=89.23と最小にしたことを表わす。
図7と図8には,電話−対面吃音頻度差に対する一般化線形モデルの結果と,電話−対面吃音頻度差の実測値とモデルによる予測値の直線回帰分析の結果を示した。図7に示すように,電話前−対面前STAI差が大きいほど吃音群の吃音頻度差が上昇することを予測する。また,図8から分かるように,予測と実測値は,決定係数R2=0.75,相関係数R=0.87で良く対応した。

太実線は吃音群〇,細実線が非吃音群●のモデル推定値。
STAI差(電話前STAI-対面前STAI)が大きい吃音者ほど電話吃音頻度が上昇する。

吃音群○,非吃音群●:一般化線形モデルによる予測はR2=0.75, R=0.87で実測値と一致する。
表2(a)に示した一般化線形モデルの結果からは,対面吃音頻度も電話吃音頻度も電話時−電話前EDA差が大きいほど上昇すると予測するモデルが最適であることが示された。つまり,対面吃音頻度と電話吃音頻度は電話時電話前EDA差が大きいと上昇すると予測されるのに対して,吃音頻度差は電話前−対面前STAI差が大きいと上昇すると予測されることが示された。
| 対面吃音頻度 | 電話吃音頻度 | 電話−対面吃音頻度差 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 係数 | p | 係数 | p | 係数 | p | |
| AICc | 45.88 | < 0.0001 | 45.73 | < 0.0001 | 89.23 | < 0.0001 |
| 切片 | 0.76 | 0.1100 | 1.15 | 0.0148 | 0.33 | 0.3000 |
| 群(ANS) | −1.17 | < 0.0001 | −1.31 | < 0.0001 | −0.82 | < 0.0001 |
| 電話時-電話前EDA差 | 0.31 | 0.0109 | 0.25 | < 0.0001 | ||
| 電話前-対面前STAI差 | 0.056 | < 0.0001 | ||||
有意な効果を示した要因に対する回帰係数とp値を示す。空白の要因は有意でないために予測式から削除されたことを示す。AICの行はAICcの最小値とモデル適合度のp値をしめす。分布はポアソン,リンク関数は対数とした。
| 対面吃音頻度 | 電話吃音頻度 | 電話−対面吃音頻度差 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 係数 | p | 係数 | p | 係数 | p | |
| AICc | 69.47 | < 0.0001 | 65.63 | < 0.0001 | 93.19 | < 0.0001 |
| 切片 | 1.25 | 0.001 | 1.54 | < 0.0001 | 1.47 | 0.0526 |
| 群(ANS) | −1.29 | < 0.0001 | −1.41 | < 0.0001 | −0.88 | < 0.0001 |
| 電話前EDA | −1.27 | < 0.0001 | −0.98 | < 0.0001 | ||
| 電話時EDA | 0.35 | < 0.0001 | 0.28 | 0.0007 | ||
| 対面前STAI | −0.076 | < 0.0001 | ||||
| 電話前STAI | 0.051 | 0.0002 | ||||
なお,表2(a)に示された説明変数はいずれも差分なので,電話時−電話前EDA差の場合,電話時EDAは吃音を増大する要因,電話前EDAは吃音を軽減する要因となったことを意味する。実際そうなっているかどうかを確認するために,説明変数電話時−電話前EDA差及び電話前−対面前STAI差を構成する変数を明示的に指定した一般化線形モデルも解析し,結果を表2(b)に示した。例えば,電話時EDAと電話前EDAを説明変数として電話吃音頻度に対して一般化線形モデルを構築すると,電話時EDAの係数は0.28,電話前EDAは−0.98となり,AICcは65.63となった。つまり,吃音を軽減する要因電話前EDAの寄与の方が,増大する要因0.28より重みが大きい差分として最適な一般化線形モデルが構成された。ただし,AICcは65.63となり電話時-電話前EDA差を説明変数とした場合の45.73より大きくなった。この傾向は対面吃音頻度や吃音頻度差に対しても同様で,結局,表2(a)の方が(b)より良い予測モデルとして採用された。この結果はEDAに吃音頻度を増大させる成分と軽減させる成分とが含まれていることを示す。
5. 非流暢度に対する一般化線形モデルの結果表3に示すように,非流暢度に対する一般化線形モデルではEDAのみが予測に関与し,STAIは予測に有意な効果を示さなかった。対面時,電話時,および両者間の差ともに,対面時−対面前EDA差が大きいほど非流暢度は低下することが示された。ただし,対面非流暢度だけは電話時−電話前EDA差が大きいほど非流暢度が上昇する形で寄与することが示された。
| 対面非流暢度 | 電話非流暢度 | 電話−対面 非流暢度差 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 係数 | p | 係数 | p | 係数 | p | |
| AICc | 69.69 | 0.0001 | 61.18 | < 0.0001 | 51.21 | < 0.0001 |
| 切片 | 3.38 | < 0.0001 | 3.74 | < 0.0001 | 2.54 | 0.0013 |
| 群(ANS) | −0.31 | 0.0001 | −0.49 | < 0.0001 | −0.75 | < 0.0001 |
| 対面時-対面前EDA差 | −0.51 | 0.0152 | −0.49 | 0.0110 | −0.75 | 0.0413 |
| 電話時-電話前EDA差 | 0.17 | 0.0175 | ||||
有意な効果を示した要因に対する回帰係数とp値を示す。空白の要因は有意でないために予測式から削除されたことを示す。分布はポアソン,リンク関数は対数とした。AICの行はAICcの最小値とモデルのp値を示す。
電話時−対面時非流暢度差に対するモデルの結果を図9に示す。モデルとしては対面時−対面前EDA差が大きいほど特に吃音群で非流暢度は低下することが分かるものの,実測値との決定係数,相関係数は高くなく,むしろ対面時−対面前EDA差が小さい吃音者では非流暢度の個人差が大きくなることが示された。

太実線が吃音群〇,細実線が非吃音群●のモデル推定値
主成分分析を行った結果,吃音頻度を増強する要因と減弱する要因が複数F1~F5あって,実測パラメータである吃音頻度やEDA, STAIが「a1*F1+a2*F2+~+a5*F5+残差」と表現できることが示された。以下の考察で詳しく述べるものの,まず理解を容易にするために,F1が吃音頻度増強因子,F2が減弱因子で,吃音頻度はF1−F2と近似でき,EDAはF1+F2と近似できると単純化して説明する。そうすると,吃音頻度とEDAはF1の増減に対しては共変動し,F2の増減に対しては相反変動するため,相関係数は小さくなる。しかし,吃音頻度もEDAもF1とF2から予測可能であり,一般化線形モデルの構築が可能であることは立証される。このような可能性を検証するためには本研究では主成分分析を行った。
その結果,生理的指標EDAや心理的指標STAIは5個の独立主成分F1~F5を包含していることが示された。また,負荷量の解析からF1は吃音頻度の増強に,逆にF2は吃音頻度の減少に,F4は非流暢度の減少に関与していることが示された。さらにF3やF5は生理的指標EDAと心理的指標STAIとで互いに独立ないしは相反する主成分として含まれていることも示された。
まず,主成分F1は吃音頻度や非流暢度,各場面でのSTAIやEDA,およびそれらの場面による変化量と正の負荷量を示したことから,主成分F1は吃音頻度とその上昇にかかわる生理的,心理的指標に関連しており,吃音増強因子の特徴を持っていることが示された。この結果は吃音がEDAやSTAIと無関係ではないことを示していると同時に,場面変化に伴うEDAやSTAIの変化が大きい吃音者ほど吃音頻度が上昇することを示唆する。
一方,F2の負荷量は,電話前EDAや対面前EDAに対してそれぞれ0.81,0.70であり,電話吃音頻度や対面吃音頻度に対して−0.48,−0.45であった。この結果は,課題説明時のEDA上昇が吃音頻度の増強ではなく「軽減」と共変動したことを示唆する。一つの可能性として,Van Riper(1982)が吃音を減弱させる要因として指摘した志気(自信,覇気,意気込み)が体の活性度を上昇させ,EDAを増大させる可能性があるものと考えられる。
F1及びF2とEDA及びSTAIとの関連を精査すると,予期不安と吃音の関連の仕方は我々の当初の作業仮説より複雑である可能性も明らかになった。筆者らは当初,発話課題実施前の説明時に予期不安が高まり,その結果として説明時にEDAが上昇するはずだと仮定した。結果は予想と違って,説明時ではなく発話時にEDAは急上昇した。このことから発話課題実施中の個々の発話行動の開始直前に予期不安が瞬時に高まり,それが課題終了まで繰り返されるために電話前より電話時のEDAが急速に上昇したまま高値を維持し,これが吃音頻度の上昇と共変動した可能性があると考えられる。
これらのことを総合すると,生理的指標EDAに予期不安がより強く反映されるのは,発話課題説明時より実施中であり,心理的指標とは出現の時間的特性が異なり,生理的指標EDAはSTAIより過渡的であると考えることも可能である。EDAとSTAIには独立な成分が含まれることは主成分F3及びF4からも示唆された。つまり,主成分F3の負荷量は4時点のSTAIに対して0.5~0.82であるのに対し,対面前EDAに対しては−0.38,他の時点のEDAに対しても負か零に近い値になっており,EDAにはSTAIで計測される心理的状態不安とは相反するか無関係な成分が含まれることが示唆される。また,主成分F5の負荷量は,対面時EDAが0.33,対面時−対面前EDA差が0.54と正の値を示し,電話前−対面前STAI差が−0.48,電話前−対面前EDA差が−0.46と負の値になった。主成分F5は吃音頻度や非流暢度とは関連が低いものの,STAI及びEDAの場面に依存した変動には相反する特性が含まれることを示す。
なお,主成分F4の負荷量が電話時−対面時非流暢度差の0.65が最大,電話時−対面時EDA差の−0.68,電話時−電話前EDA差の−0.63が負で最大だったことは,主成分F4が電話という緊張場面での非流暢度増強因子を表すと考えられ,電話時−対面時EDA差や電話時−電話前EDA差が増大すると非流暢度が減少することを示唆する。
一般化線形モデルは上記の考察を検証する結果となった。つまり,最適な一般化線形モデルでは,対面吃音頻度と電話吃音頻度は電話時−電話前EDA差が大きいと上昇すると予測され,また場面間の吃音頻度差は電話前−対面前STAI差が大きいと上昇すると予測された。電話前STAIや電話前−対面前STAI差が大きいと吃音頻度が上昇することが示されたことは,予期不安が吃音頻度を上昇させるという仮説を支持する結果である。
さらに,非流暢度の一般化線形モデルの結果からは,対面時−対面前EDA差が非流暢度の軽減に,電話時−電話前EDA差が増大に関係する変数として選択された。特に対面前に比較して対面時のEDA変化量である対面−対面前EDA差が大きいほど,両場面の非流暢度が下がり,かつ,電話時と対面時の非流暢度の差も小さくなった。言い換えると,対面場面でのEDA上昇は非流暢度の減少と,電話場面でのEDA上昇は吃音頻度及び非流暢度の上昇と共変動することを示したということである。
つまり,対面場面でEDAが上昇する特性を持った話者では非流暢度が低くなる傾向が,電話場面でEDAが上昇する特性をもった話者は吃音頻度も非流暢度も高くなる傾向があるということである。
研究協力者への事後聞き取りによると,対面より電話の方が不安で避けたい気持ちが強いという傾向が確認され,電話場面は高不安条件であったと考えられる。実際,電話場面のSTAIは対面場面に比べて有意に上昇した.このこととEDAの寄与を総合して考えると,状態不安が高い高不安場面(電話)でのEDA上昇は不安にかかわる生理的反応であり,状態不安が低い低不安場面(対面)でのEDA上昇はむしろ活性化に関わる生理的反応であると考えられる。また電話時EDAが対面EDAより高いことには電話課題実施中の発話困難に対する努力や工夫に関わる心理的・生理的負担が影響した可能性も考えられる。このような違いがあるために,EDAとその変化量には吃音頻度の増大にも軽減に共変動する主成分が観測されたものと考えられる。
対面場面の吃音頻度の最適な予測変数として電話前および電話時のEDA差が選択されたことは不可思議に感じられる可能性がある。しかし,電話に限らず会話場面の変化に対する吃音者の「過敏さ」,つまり場面変化に伴う緊張や不安の変化特性が,本研究では電話時EDAと電話前EDAの差として最も尖鋭に計測された結果だとすれば合理的な結果である。一般化線形モデルの予測変数として場面間のEDA差を含めた理由は,不安要因に対して最も鋭敏にEDAが反応する場面を探索することにあった。ある特定場面間で観測されるEDAやSTAIの変化特性が,別の場面での吃音頻度を予測するのに有効であってはならないという主張には根拠がないと思われる。
生理的指標EDAには吃軽減と共変動する成分が含まれるという結果は自律訓練法との関連で興味深い。姿勢を整え調息し精神を集中する自律訓練法で,皮膚温度が下降する手技(収功)と上昇する手技(発功)とがある(小川,1988)こととの関連である。収功中は手の血流が著減し皮膚温が下がり,逆に発功中は手指皮膚温が上昇すると報告されている。EDA上昇は皮膚温度の上昇に伴うと考えられるので,不安とは逆に精神的,肉体的活性化に関連する可能性もある。言い換えれば,発功の特性を身につけた吃音者ではEDA上昇が吃音や非流暢度の軽減に繋がっているという予想が可能かもしれない。しかし,この予想は実際に自律訓練法を行って確認する必要があり,今後の課題である。
一般化線形モデルでは,群(吃音群,非吃音群)の効果が有意で,吃音頻度および非流暢度とも吃音群の方が非吃音群より大きいことが示された。以上の結果は,予期不安は吃音頻度および非流暢度の増減と共変動する特性をもっているものの,群の効果として表現される群間差異を生み出す要因は他にもあることを示す。この結果は,予期不安の軽減が,群間差異を生み出す原因の解消には繋がらないとしても,吃音頻度および非流暢度の軽減には関係し得ることを示唆する。
なお,EDAに関してベースラインとして準備時EDAを差し引いた変化量を考慮すべきだという見解があり得る。本論文では計測値そのものと場面間の変化量とを入力した。そのようにした第一の理由は,一般化線形モデルが最適な変数変換の探索も含めてAICcを最小化するモデルの構築を目指すので,計測値そのものを使用することが推奨されているためである(久保,2016)。場面間変化量も使用したのは,先にも述べたように,場面変化に対する過敏さが吃音頻度に関係するという作業仮説を検証するためであり,またEDAが包含し得る相反要因を効果的に分離するためでもある。
実際,ベースライン(準備時EDA)の効果は明示的ではないものの,モデルには含まれている。表2(a)のモデルでは,「電話時EDA-電話前EDA」が説明変数となっているので,準備時EDAをあらかじめ差し引いても引かなくても同じ結果になる。一方,表2(b)のモデルでは電話前EDAの係数が−0.98,電話時EDAの係数の係数が0.28なので,準備時EDAをあらかじめ差し引いた場合,EDAに関する係数は,「0.28・電話時EDA-0.98・電話前EDA+0.7・準備時EDA」となる。つまり表2(b)のモデルを採用するなら,準備時EDAの高低が吃音頻度に影響することを示唆することになる。AICc最小なのは表2(a)のモデルなので,準備時EDAは影響しないことになる。
なお,表2(a)の一般化線形モデルがAICcを最小にすることを明示するために,検討した全てのモデルとAICcを示すことは不可能ではない。しかし,図表や頁数の制限を考慮して表2(a)よりはAICcが大きくなる表2(b)を例示するだけに留めた。
また,本研究で行った対面課題と電話課題の比較によって,「日常場面での対面・電話の緊張度を推測するのは単純には出来ない」という見解もあり得る。本研究での場面設定は一定の条件下で状態不安やEDAの変化を計測することが主目的であって,「日常場面での対面・電話の緊張度を推測する」ことではない。日常場面での対面・電話の緊張度が,相手との関係や要件の緊急度など多様な要因に影響されることは明らかであり,これら多様な要因をコントロールすることは本研究の必須要件ではない。
さらに,電話器を手に持つことで皮膚伝導度が上がったのではないかという疑問もあり得る。本研究では左右両手にそれぞれ別の皮膚電導度測定装置Qセンサーを装着し,アーチファクトの少ない方を解析した。そのため,電話器をもった手が動いたり発汗したりしてアーチファクトを増大させた可能性は最小限に抑えられている。また,共通の条件下で比較した結果,吃音者の電話時EDAが非吃音者より有意に上昇したということを,電話器を手に持ったことに帰着できるとは考えにくい。
吃音群では対面場面より電話場面で吃音頻度と状態不安(STAI)が相関して上昇し,状態不安と吃音頻度との関係が有意であることが示された。主成分分析ではEDAに吃音頻度の上昇にも軽減にも相関する主成分が観測された。一般化線形モデルを活用した分析結果からは,状態不安が高い電話場面でのEDA上昇は吃音頻度の上昇に,状態不安が低い対面場面でのEDA上昇は非流暢度の減少に関連することが示された。ただし,一般化線形モデルでは,群(吃音群,非吃音群)の効果が有意で,吃音頻度および非流暢度とも吃音群の方が非吃音群より大きいことが示された。以上の結果は,予期不安は吃音頻度および非流暢度の増減には関与するものの,群の効果として表現される群間差異を生み出す要因は他にもあることを示唆する。生理的指標EDAに吃音軽減と共変動する成分が含まれるという結果は吃音の認知行動療法や自律訓練法との関連で興味深く,予期不安の軽減が吃音の軽減には繋がらないとする先行研究には再考の余地があることも示唆する。