野兎研究会誌
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広葉樹苗木に対するノウサギLepus brachyurusの食害
山田 文雄井鷺 裕司
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1988 年 15 巻 p. 9-17

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抄録
ヒノキ25年生人工林の伐採跡地(20×30m)に,5種の広葉樹苗木(標高約1m,根元直径約1cm)を植栽したところ,ノウサギLepus brachyurusによる食害が発生した。食害はほとんど主軸や個枝に対する非採食切断型であった。食害の発生季節は5-10月(1986年)の期間であった。この試験地に侵入したノウサギはその糞量から判断して若干数と思われた。ノウサギは,この試験地に隣接する二次林(ウラジロ優占の林床植生)から侵入し,植栽広葉樹苗木を食害したものと思われた。植栽された樹種のすべてに食害は認められ,被害率はコブシMagnolia kobus(100%),コナラQuercus serrata(97%),ヤマザクラPrunus jamasakura(87%)およびケヤキZelkova serrata(62%)の順となり,ヤマモミジAcer palmalum(20%)で有意に低かった(κ^2検定, P<0.001)。このような切断型行動はウサギ科Leporidaeに共通の特徴といえるが,この行動の意味は十分には解明されていない。本試験地のような環境下に幼齢広葉樹を植栽すると,ノウサギによって壊滅的食害を受ける可能性は高いといえる。
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© 1988 森林野生動物研究会
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