2022 年 5 巻 2 号 p. 1-7
【目的】平成30年北海道胆振東部地震に伴った停電における、札幌市在宅人工呼吸器患者への対応の実態と入院となったリスク要因を検討する。
【方法】札幌市在宅医療協議会所属会員を対象として行われたアンケート調査を利用し、本研究を行った。
【結果】札幌市内の在宅人工呼吸器患者数は230名であった。使用時間が常時(24時間)であれば入院に対するPR(prevalence ratio)は9.07(95%CI:5.10~16.10,p<.0001)、人工呼吸器設定についてはTPPV(tracheostomy positive pressure ventilation)の場合、TPPVではない場合に比べ入院に対するPRは3.57(95%CI:2.29~5.55,p<.0001)であった。年齢と使用時間による多変量解析では、使用時間のPRが9.21(95%CI:5.17~16.39,p<.0001)であった。入院とならなかった患者は147名であり、入院回避の理由として、電源が確保できたが87名(59.2%)で、自家用車からの電源確保が35名(40.2%)であった。
【結語】災害に伴った停電時には在宅人工呼吸器24時間使用は入院のリスクとなる。リスクが高い患者において日ごろから自家用車などの非常電源を確保しておくことが、災害急性期の停電対策として重要である。