抄録
今回,側頭下窩に再発した脊索腫症例を経験した。症例は64歳,男性。過去に2回腫瘍摘出術をうけている。CT,MRIで腫瘍は側頭下窩を占拠し,内側では海綿静脈洞に浸潤が疑われた。再発の可能性が高いと考えられたため,今後再手術に対応しやすく,術後の機能障害や顔貌の変形を最小限にする方針で,手術アプローチとして上顎スイング法を選択し,欠損腔は組織充填を行わない計画とした。しかし,上顎スイング法の術後問題点の1つに口蓋瘻孔形成がある。我々はNgらが報告した硬口蓋の粘骨膜切開と口蓋骨骨切り線を一致しない工夫を導入した。術後口蓋瘻孔は生じず,この方法は有用であった。