抄録
甲状腺分化癌,特に乳頭癌,濾胞癌は進行が遅く生存率が高い。また進行癌であっても適切な手術を行うことで死亡する例は少なく,姑息的な手術でも長期間の生存を可能にすることができると言われている1, 2)。しかし腫瘍浸潤のために気管,喉頭,食道等を圧排し,生命予後を短くすることがある。また,気管の狭窄や圧排により,手術時に気道の確保が困難となる可能性があるため,術前に気道確保の方法について十分に検討する必要がある。
今回我々は気道狭窄をきたし,手術時に気道確保が困難な甲状腺乳頭癌(T4aN1bM0)に対し,全身麻酔導入時に経皮的心肺補助下に気管切開を行い,気道確保した後,腫瘍を摘出,救命し得た症例を経験したので報告する。