抄録
近年,超選択的動注化学療法が各種の頭頸部癌に対して良好な成績を挙げており,外耳道癌に対しても有効例が散見されるようになってきた。当科では数年前から進行外耳道癌の術前治療として超選択的動注化学療法を導入しており,過去7年間の外耳道癌6例のうち3例に適応された。適応例の3例中2例で顎関節包付近の外科的断端が陰性となり,術前に顎関節窩への浸潤が疑われていたにもかかわらず,下顎骨関節突起を温存することが可能であった。これらの治療中に重篤な合併症はなく,術後2年現在で非胆癌生存である。本法は,外耳道進行癌の切除率と患者のQOL向上が期待できる一治療選択肢として有用である可能性が高い。