抄録
喉頭低位・腕頭動脈高位・短頸・肥満・頸部伸展困難・甲状腺疾患などにより,通常の位置での気管切開術が困難な症例において,輪状軟骨前方部分の鉗除を行う気管孔形成術の有用性が報告されている。当科における通常の位置での気管切開術166例と輪状軟骨前方部分の鉗除を行う気管孔形成術12 例,計178例の術後早期合併症の比較検討を行った。気管切開術においてはデブリードメンを要した創周囲感染・壊死18例(10.8%)などの各種合併症を認めたが,輪状軟骨前方部分の鉗除を行う気管孔形成術では,術後早期合併症で重篤なものは認められなかった。本術式は通常の位置での気管切開が困難な症例において,気管孔を閉鎖する可能性が低い場合に適応できる安全な術式と考えられた。