2015 年 25 巻 2 号 p. 209-214
WHO分類において,筋上皮癌は1991年の改訂で加わり,多形腺腫由来癌は2005年の改訂で独立した。多形腺腫由来癌は全唾液腺腫瘍の3.6%,悪性唾液腺腫瘍の11.6%を占める腫瘍であり,筋上皮癌は,全唾液腺腫瘍の中で発生頻度が0.2~0.5%のまれな腫瘍である。
今回われわれは,多形腺腫由来癌の癌成分として筋上皮癌を認めた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。症例は75歳女性。15年前に検診で右耳下部腫瘤を指摘されており,徐々に増大したため当院紹介となった。右耳下腺浅葉に22×24mmの境界明瞭な腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診でclass III a多形腺腫疑いであった。その後1年間受診なく,再診時に腫瘍の増大を認めたため,悪性化の可能性も考慮し,右耳下腺浅葉切除術を施行した。術後病理は多形腺腫由来癌で悪性部分は筋上皮癌であった。現在術後2年9か月経過しているが再発や転移を認めず外来にて経過観察中である。