抄録
耳下腺腫瘍内で異なるダイナミックMRI像,拡散強調像,拡散係数を示し,悪性腫瘍箇所を同定し得た多形腺腫由来癌の1例を経験したため報告する。症例は64歳男性。20年前より徐々に増大する左耳下部腫脹にて受診。MRIにて約4×3cmの腫瘤を認め,2度の穿刺吸引細胞診,エコー下針生検で耳下腺癌疑いの診断にて,手術治療を行った。術後病理結果にて唾液腺導管癌の診断であり,癌腫部分の他,高度な硝子様瘢痕箇所を認め,多形腺腫由来癌に矛盾しない病理所見と臨床経過から多形腺腫由来癌と診断した。癌腫部分のみダイナミックMRI,拡散強調像,拡散係数ともに悪性パターンを示しており,病理像と一致した。