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岸下 定弘, 中尾 一成, 坂井 梓, 岩城 弘尚, 小村 豪
2017 年26 巻3 号 p.
315-320
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
2006年1月から2015年3月までの10年間で,当科で初回手術を行った大唾液腺癌17例を対象に検討を行った。内訳は,男性11例,女性6例,年齢の中央値は51歳 (19~88歳),原発部位は耳下腺12例,顎下腺4例,舌下腺1例であった。病期については,Stage Iが3例,Stage IIが6例,Stage IIIが4例,Stage IVが4例であった。5年疾患特異的生存率は85.1%,5年無病生存率は77.4%であり,T3-4,N (+)群,Stage III-IVで有意に予後不良であった。予後向上のため,高リスク症例には,十分な局所切除と後治療を考慮する必要があると考えられた。
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篠原 尚吾, 末廣 篤, 岸本 逸平, 原田 博之, 林 一樹
2017 年26 巻3 号 p.
321-326
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
本邦では甲状腺専門病院に多くの患者が集まるが,基礎疾患のある症例は総合病院へ紹介される。このような症例は周術期の管理に難渋することがある。過去10年間に当院で施行した甲状腺手術533例のうち,基礎疾患により総合病院での治療目的で来院した患者34例(6%)につき検討した。基礎疾患は循環器系11例,重度の糖尿病6例,透析中4例などであった。重い全身疾患をしめすASA-PS3症例は12例35%であった。全症例の5年累積総生存率は73%,であった。基礎疾患がもとで創傷治癒の遅延や,重篤な合併症を引き起こす症例があったことから,術前の全身状態に応じた手術プランを検討することが必要であろうと考えた。
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―特に喫煙と受動喫煙との関連について―
都築 伸佳, 佐々木 俊一, 松本 伸晴, 遠藤 理奈子, 阿部 実恵子
2017 年26 巻3 号 p.
327-330
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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喉頭癌は圧倒的に男性に多く,特に喫煙が発生リスクとされるが,受動喫煙,胃食道逆流症,
H.pylori感染等,その他の因子の関与も指摘されている。2005年から2015年に当科で喉頭癌と診断された症例を本人からの聞き取りと診療記録から調査し,女性症例の喫煙とその他の因子の検討,男性症例との比較・検討を行った。女性症例は,103例中7例であり,喫煙率は29%であったが,受動喫煙を含むタバコ煙曝露率は71%であり,受動喫煙が喉頭癌発症リスクである可能性が推察された。
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渡邉 佳紀, 田中 信三, 平塚 康之, 吉田 尚生, 草野 純子, 吉松 誠芳, 森田 勲, 松永 桃子
2017 年26 巻3 号 p.
331-339
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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咽喉頭がんの機能温存かつ低侵襲な根治手術として,内視鏡下での経口的手術が行われている。代表術式として内視鏡的咽喉頭手術 (ELPS) や経口的咽喉頭部分切除術 (TOVS) が挙げられ,安全性と有用性が報告されている。筆者は前任地の京都医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科で考案された先端可動型硬性内視鏡を用いた内視鏡下経口的咽喉頭手術 (End-flexible-rigidscopic Transoral Surgery:E-TOS) の有用性を報告してきた。これまでの術式と比し画期的な点は,原発巣に合わせて柔軟に展開器具が選択できることと干渉の少ない術野観察が可能で切除操作能が向上することである。現任地に赴任後,2013年7月から2016年3月までに中下咽頭・声門上癌48例に同術式を施行したので治療成績を報告する。
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新井 啓仁, 小澤 聡美, 吉村 佳奈子, 水田 康博, 森 大地, 山道 怜, 松井 雅裕, 中野 宏
2017 年26 巻3 号 p.
341-346
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
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頸動脈破裂を来した2症例を報告する。1例目は38歳男性,甲状腺癌術後に感染を契機として総頸動脈が破裂し救急受診した。血管造影下に出血点を確認,バルーンで血管を閉塞させたうえで,総頸動脈の外科的結紮術を施行し,創部をDP皮弁で再建した。2例目は55歳女性,30年前に舌癌に対して頸部郭清術,術後コバルト照射を受けた。その後,頸部瘻孔が生じ,同部より頸部出血した。CTで外頸動脈に仮性動脈瘤を認め,コイル塞栓したが再出血した。頸部を開創し頸動脈分岐部の壊死を確認,頸動脈の外科的結紮を行い,大胸筋皮弁で再建した。2例とも炎症を契機とした頸動脈破裂で,幸いにも頸動脈の外科的結紮により脳血管障害を生じず,救命できた。
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西川 大輔, 花井 信広, 鈴木 秀典, 福田 裕次郎, 小出 悠介, 寺田 星乃, 高野 学, 小栗 恵介, 長谷川 泰久
2017 年26 巻3 号 p.
347-351
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
2000年1月から2015年5月までに当院で手術治療を行った喉頭気管浸潤を伴う分化型甲状腺癌27例について検討を行った。
病理組織は全例乳頭癌であった。気管合併切除25例,甲状軟骨切除5例,輪状軟骨切除7例であった。10年粗生存率70%,10年疾患特異的生存率は83%であった。再発は11例に認めた。局所再発は認めず,領域のみの再発5例,遠隔のみの再発6例であった。術後放射性ヨード内用療法を施行しなかった症例では22例中11例に再発を認め,放射性ヨード内用療法施行例では再発を認めなかった。
分化型甲状腺癌喉頭気管浸潤例治療においては,術式を適切に選択し術後治療を行うことが予後改善のために重要であると考えた。
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松居 秀敏, 岩江 信法, 平山 裕次, 米澤 宏一郎, 繁治 純
2017 年26 巻3 号 p.
353-357
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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喉頭垂直部分切除術は近年早期声門癌の照射後再発に対して施行されることが多い。一部のT3病変や声門以外の喉頭癌などへの適応拡大は原発巣再発の注意が必要である。2005年から2014年に当科で喉頭垂直部分切除術を施行した喉頭扁平上皮癌21例を対象として原発巣制御率と原発巣再発の危険因子について検討を行った。3年原発巣制御率は83%であった。原発巣再発の危険因子は前治療の有無(
p=0.12),亜部位の差(
p=0.31),傍声帯間隙浸潤の有無(
p=0.026),頸部照射の既往の有無(
p=0.48)では有意差はなく,声門下進展の有無(
p=0.0087)で有意差を認めた。声門下進展症例に喉頭垂直部分切除を施行する際は適応を慎重に行う必要があると思われた。
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力丸 文秀, 松尾 美央子, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
2017 年26 巻3 号 p.
359-362
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
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当科で治療を行った喉頭扁平上皮癌(声門)T3症例17例の臨床的検討を行った。対象の治療方針は化学放射線同時併用療法(以下,CCRT)を30~40Gy施行し,腫瘍消失であればCCRT続行し,残存であれば手術を行っている。また手術拒否症例はCCRT継続としている。この結果,3年5年粗生存率はそれぞれ76%,63%で,死因特異的生存率は3年で87%,5年は78%であった。喉頭温存率は3年5年ともに29%であった。治療前の所見でみると,甲状軟骨内側浸潤のない症例は喉頭温存の可能性があると思われた。
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横島 一彦, 中溝 宗永, 稲井 俊太, 酒主 敦子, 加藤 大星, 大久保 公裕
2017 年26 巻3 号 p.
363-366
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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頭頸部手術において,顔面神経下顎辺縁枝の機能温存は,術後QOLを保つために大切である。また,その結果のフィードバックは手技向上のためにも重要である。本研究では,術後の口唇運動麻痺の多様性とその評価について検討した。
2013年以降に手術を行った耳下腺良性疾患100例を対象に,口角下制時,口唇突き出し時の口唇運動の左右差を評価した。
口唇下制の左右差は36例で確認された。その中でオトガイ筋収縮スコア0は22例,1は9例,2は5例であった。術後1か月ではそれぞれ31%,77%,100%,3か月では5%,56%,100%で口角下制左右差が残存した。
術後口唇運動麻痺は,オトガイ筋収縮の程度により群分けができ,治癒予測の根拠となると考えられた。
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尾股 丈, 太田 久幸, 富樫 孝文, 橋本 茂久
2017 年26 巻3 号 p.
367-371
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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当科で2010年から2014年までの5年間に,耳下腺腫瘍と診断し手術を施行した123例について検討した。内訳は男性75例,女性48例で,年齢は18~82歳(平均年齢54.3歳),病理組織診断では良性腫瘍105例,悪性腫瘍18例であった。画像検査,穿刺吸引細胞診,術中迅速検査における良悪性の診断精度について比較し,感度/特異度はCTで58.8%/92.4%,MRIで58.8%/94.9%,穿刺吸引細胞診で30.8%/100%,術中迅速病理診断で75.0%/96.6%だった。診断精度は術中迅速病理診断で最も良好だったが偽陰性を4例,偽陽性を3例認めた。それらの症例では術前検査と術中所見を総合的に判断して術式を決定する必要があった。
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舩越 うらら, 花澤 豊行, 山★さき★ 一樹, 米倉 修二, 鈴木 猛司, 櫻井 大樹, 岡本 美孝
2017 年26 巻3 号 p.
373-378
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
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鼻副鼻腔内反性乳頭腫(IP)は良性腫瘍であるが,約10%に癌を合併すると報告されている。しかしIPに合併する悪性腫瘍の存在を,術前から推察することは困難なことが多い。本稿では,手術標本で初めて扁平上皮癌の合併を確認し,治療に難渋したIPの3症例について検討した。全例Krouse分類T4症例で,骨破壊像を認めた。また,IPに特徴的なMRI所見である脳回様パターン(CCP)を消失したIPは悪性腫瘍の合併が高いと言われ,今回の3症例でもCCPの欠失が存在した。CTにおける骨破壊像やMRIでのCCPの欠損などの画像上の特徴的所見から癌の合併を疑い,生検部位や治療方針の確定が可能になると考えられた。
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天津 久郎, 金村 信明, 中野 友明, 愛場 庸雅
2017 年26 巻3 号 p.
379-382
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
喉頭全摘後の代用音声の一つである気管食道瘻発声は発声持続時間が長く流暢な発声であることが特徴であるが,中には発声が困難な症例もみられる。シャント発声が困難となったが甲状咽頭筋の過剰な収縮が原因であることを診断し,外科的治療を行うことによりシャント発声が可能となった症例を経験した。シャント発声が困難となった症例の中にも,適切な診断・外科的治療を行うことにより,発声が可能となる症例があり,頭頸部外科医が喉摘者の代用音声の獲得に果たす役割は大きいと考えられる。
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山村 晃司, 小村 豪, 齊藤 祐毅, 吉田 昌史, 安藤 瑞生, 二藤 隆春, 朝蔭 孝宏, 山岨 達也
2017 年26 巻3 号 p.
383-387
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
喉頭原発の全悪性腫瘍の中で軟骨肉腫は比較的稀であるが,扁平上皮癌,腺癌についで多く,過去にも症例報告が散見される。その治療法は外科的切除であり,有効な化学療法や放射線療法は確立されていない。今回われわれは輪状軟骨原発軟骨肉腫に対し喉頭を温存して切除し得た1例を経験したため報告する。症例は77歳男性,CTで輪状軟骨左側に28mm大の腫瘤性病変が指摘され当科受診した。外切開による腫瘍生検にてGradeⅠの軟骨肉腫と診断し,後日喉頭側方からのアプローチで喉頭を温存しての腫瘍摘出術を施行した。術後経過は良好で音声・嚥下機能は温存された。術後1年経過現在,外来にて経過観察中である。
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若盛 隼, 小川 武則, 臼渕 肇, 阪本 真弥, 小嶋 郁穂, 村田 隆紀, 嵯峨井 俊, 中目 亜矢子, 大越 明, 東 賢二郎, 石井 ...
2017 年26 巻3 号 p.
389-393
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/03/07
ジャーナル
フリー
耳下腺腫瘍内で異なるダイナミックMRI像,拡散強調像,拡散係数を示し,悪性腫瘍箇所を同定し得た多形腺腫由来癌の1例を経験したため報告する。症例は64歳男性。20年前より徐々に増大する左耳下部腫脹にて受診。MRIにて約4×3cmの腫瘤を認め,2度の穿刺吸引細胞診,エコー下針生検で耳下腺癌疑いの診断にて,手術治療を行った。術後病理結果にて唾液腺導管癌の診断であり,癌腫部分の他,高度な硝子様瘢痕箇所を認め,多形腺腫由来癌に矛盾しない病理所見と臨床経過から多形腺腫由来癌と診断した。癌腫部分のみダイナミックMRI,拡散強調像,拡散係数ともに悪性パターンを示しており,病理像と一致した。
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山田 雅人, 伊藤 卓, 小出 暢章, 渡邊 浩基, 朝蔭 孝宏
2017 年26 巻3 号 p.
395-399
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
ジャーナル
フリー
多発性対称性脂肪腫症は,頸部,肩,上腕や体幹部に,多発性,対称性に被膜を有さない脂肪組織の沈着を来す疾患で,日本での報告は極めて稀である。今回われわれは,両側顎下部からおとがい下部にかけて発生した多発性対称性脂肪腫症に対し,整容目的で切除術を行い,患者の高い満足が得られた症例を経験したので報告する。症例は63歳男性。4年前からの頸部腫脹で受診された。緩徐な経過で増大し,シャツの着用が困難となったため,整容目的で手術治療を行う方針となった。皮膚切開は横切開とし,広頸筋の浅層と深層に分けて脂肪組織の郭清を行った。術後6か月時のMRIにて再発なく経過しており,高い整容性が維持されている。
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米田 理葉, 花澤 豊行, 鈴木 猛司, 市川 英樹, 蒔田 勇治, 堅田 浩司, 米倉 修二, 茶薗 英明, 櫻井 大樹, 岡本 美孝
2017 年26 巻3 号 p.
401-405
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
ジャーナル
フリー
症例は2歳5か月男児,菜箸の口腔外傷から副咽頭への先端遺残が疑われ紹介となった。軟口蓋に裂創があり,CTにて頭蓋底から環椎右側にかけて含気を有する裂創を認めた。遺残の可能性があると判断して,内視鏡を用い探索したが,異物の同定はできなかった。その後の経過で右副咽頭間隙の小領域にCT値の変化を認めた。ナビゲーションシステムを使用し,受傷後26日目に異物を内視鏡下に摘出することができた。幼小児の体内異物は診断が難しく,特に箸などのX線透過性異物はCTでは同定しづらいが,その経時的変化により確認できることがある。微小な咽頭異物摘出にはナビゲーションシステムの使用が有用であり,考察を含め報告する。
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竹内 成夫, 栗田 宣彦, 吉田 亜由, 畑 裕子, 奥野 妙子
2017 年26 巻3 号 p.
407-411
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
ジャーナル
フリー
症例は44歳女性,以前から自覚する顎下部リンパ節腫脹の増悪を主訴に来院。4年前に右下顎第一大臼歯に2回目の根管治療を行った歯科治療歴あり。リンパ節細胞診の結果はclass 3で悪性リンパ腫を否定できなかった。右下顎第一大臼歯の歯根部に骨吸収と囊胞形成を認めたためこの感染部位に対する反応性リンパ節腫脹を疑い抜歯したが,リンパ節はその後も腫脹・縮小を反復した。顎下腺摘出術・顎下部リンパ節摘出を施行したところリンパ節内に顆粒状物質を取り込んだマクロファージ像を認めた。本症例の結果から,組織親和性が高く注入部位に留まるとされている根管充填剤でも周囲のリンパ節に運搬され移動,炎症を起こすことが示唆された。
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桂 資泰, 内藤 愼二, 石丸 幸太朗, 柴宮 夏子
2017 年26 巻3 号 p.
413-418
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
ジャーナル
フリー
血管肉腫は,頭頸部皮膚や四肢,後腹膜腔などに好発する予後不良な悪性軟部腫瘍である。今回われわれは腫瘍からの大量出血によって出血性ショックをきたし最終的に緊急で上顎亜全摘術を行った極めてまれな上歯肉原発血管肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
症例は68歳女性。3か月前から口腔内腫瘤を自覚していたが放置していた。口腔内から突然の大量出血があり出血性ショックで救急搬送された。外頸動脈結紮を含む2度の止血処置で完全止血が得られなかったため緊急で上顎亜全摘術を行った。摘出標本の病理診断が血管肉腫であったことから術後放射線照射(70Gy)を施行した。現在,術後1年を経過し無病生存中である。
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能田 拓也, 中村 有加里, 三輪 高喜, 下出 祐造, 辻 裕之, 赤井 卓也, 山下 昌信
2017 年26 巻3 号 p.
419-423
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
ジャーナル
フリー
症例は58歳男性。半年ほど前より右鼻閉と頻回の鼻出血を主訴に前医受診。右鼻腔内に出血を伴う壊死性腫瘍を認め,生検の結果adenocarcinomaの診断であった。造影CTでは右篩骨洞を中心に造影効果を有する腫瘤性病変を認め,前頭蓋底,右眼窩内側壁への浸潤が疑われた。またMRI検査ではT1強調像で造影効果を受ける低信号と高信号の混在する腫瘍を認めた。
まずシスプラチン,フルオロウラシル,ロイコボリンを用いた導入化学療法を施行した後,脳神経外科と形成外科と合同で頭蓋底手術を施行した。術後病理学的所見ではBarnesの分類でpapillary-typeの診断であり腫瘍断端は陰性であった。術後照射として放射線外照射を計50Gy施行し,術後半年経過した現在無再発生存中である。
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池田 雅一, 多田 靖宏, 谷 亜希子, 仲江川 雄太, 川瀬 友貴, 室野 重之
2017 年26 巻3 号 p.
425-429
発行日: 2017/02/28
公開日: 2017/10/26
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症例は69歳女性。咽頭痛と喀痰,左頸部腫脹を主訴に前医に受診し,喉頭浮腫を来していたため当院紹介され受診した。喉頭内視鏡で喉頭左側に腫脹と浮腫を認め,気道狭窄を来していた。頸部CTにて液面形成を伴う囊胞性病変が喉頭から頸部に認めたためlaryngoceleの感染と診断した。抗菌薬投与と頸部からの穿刺排膿が著効し感染は軽快した。初回治療から約2か月後に頸部外切開法でlaryngocele摘出術を行った。手術後には一過性の喉頭浮腫を来したが,保存的治療で対応可能であった。治療経過を通じて気管切開術を回避することができた。
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