抄録
頭頸部外科領域において,放射線治療後の術後縫合不全はしばしば閉鎖に難渋する。今回われわれは,放射線治療後の再発喉頭癌に対して施行した喉頭全摘出術後に生じた難治性咽頭瘻にフィブリン糊製剤を使用し閉鎖に至った1例を経験した。デブリードマンおよび前胸筋皮弁作成等による感染の制御や局所処置継続による肉芽増生を促進したが,pin hole状の咽頭皮膚瘻が残存した。救済手術から184日目にフィブリン糊製剤を瘻孔内に充填したところ,咽頭皮膚瘻の閉鎖が得られ,その後は再発なく経過している。フィブリン糊の使用方法は簡便であり,瘻孔の縮小はあるものの閉鎖には至らない症例でフィブリン糊製剤充填による閉鎖が有効である可能性が示唆された。