頭頸部外科
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27 巻, 1 号
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手術手技セミナー4
手術手技セミナー2
  • 吉原 俊雄
    2017 年 27 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    唾液腺の手術は大唾液腺の疾患と口腔内の小唾液腺および口唇腺の疾患や検査が対象となる。腫瘍性疾患,囊胞性疾患,感染性疾患,唾石症,免疫やアレルギーなど全身疾患に関連する疾患など多彩である。完全摘出を目指す腫瘍や囊胞の他,保存的療法に抵抗する疾患の整容的手術,唾石摘出,確定診断のための生検術などその目的と手技も異なってくる。各手術の特徴と留意点について概説した。
原著
  • 内田 育恵, 植田 広海
    2017 年 27 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    サーファーズイヤー(外耳道外骨腫)は,長期にわたる慢性的な冷水刺激が外耳道に加わることにより,骨部外耳道に生じる骨増殖性隆起である。当教室では,2009年7月から2015年7月までの6年間に,8例13耳のサーファーズイヤー手術症例を経験した。手術は全例耳内切開で行い,合併症はなく良好な結果を得た。1症例を提示し手術手技を詳述した。外耳道では過剰な骨削開により,前壁では顎関節包,後方では乳突蜂巣,および顔面神経を損傷するリスクがある。特に顔面神経の走行は,鼓膜輪との位置関係にバリエーションがあり,外耳道外骨腫の手術合併症予防の観点から,手術手技に関する文献的考察を加えた。
  • 手島 直則, 吉本 世一, 松本 文彦, 小林 謙也, 槇 大輔, 深澤 雅彦, 浅井 昌大, 小野 貴之
    2017 年 27 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    2007年から2015年の期間に当科で原発不明頸部転移癌に対して頸部郭清術を施行した23例を後方視的に検討した。観察期間の中央値は22か月,組織型は扁平上皮癌15例,腺癌3例,低分化癌3例,悪性黒色腫1例,腺様囊胞癌1例,14例でECS(+)であった。郭清範囲はLevel I-Vが8例,Level I-IVが6例,Level II-Vが6例,Level II-IVが1例,Level III-Vが1例,Level I-IIIが1例で転移リンパ節はLevel IIが70%と最多でついでLevel IV 50%,Level III 30%,Level V 27%であった。Level Iの郭清は17例で施行されていたが全例に転移リンパ節を認めなかった。口蓋扁桃摘出は8例で施行し3例でSCCが得られた。術後に原発巣が判明した症例は5例(中咽頭2例,硬口蓋1例,下咽頭1例,声門上1例)であった。術後放射線治療は4例に対し咽頭粘膜を避けて患側頭蓋底から鎖骨上までの頸部に照射した。全23例の粗生存率は2年72%,5年57.6%で無再発生存率は2年60.2%,5年53.6%で局所・頸部制御率は2年,5年ともに83.6%と良好であった。全症例に全頸部郭清を施行するのではなく頸部腫瘤の位置や性状に応じてLevel I領域の予防郭清を省略すること,術後放射線治療は患側頸部のみに設定することで機能温存と原発巣出現時の制御は可能であると考えられた。
  • 本多 啓吾, 安里 亮, 宮﨑 眞和, 嘉田 真平, 辻村 隆司, 片岡 通子
    2017 年 27 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    下顎歯肉癌T4a症例のうち,再建手術が困難な症例における非再建区域(半)切除術の安全性,機能予後,腫瘍学的予後について報告する。【対象・方法】2009–2014年に初回根治治療を行った下顎歯肉癌T4a症例中,非再建区域(半)切除術を行った7例の診療録調査。【結果】4例で頸部郭清,全例で気管切開を施行していた。手術時間中央値は157分,出血量中央値は220gであった。創部合併症は口腔皮膚瘻1例,頸部感染1例で,全身合併症は認めなかった。全例で気切閉鎖および経口摂取が可能であった。疾患特異的生存率は65%(4年)であった。【結論】非再建区域(半)切除術は,根治性を保った低侵襲治療であり予備能のない患者に対する選択肢となりえる。
  • 東谷 敏孝, 長谷川 稔文, 窪田 雄一, 入谷 啓介, 小池 雪絵
    2017 年 27 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    口蓋に発生した小唾液腺腫瘍を4例報告する。
    症例1は35歳の男性で,主訴は口腔内の腫瘤であった。経口的に摘出し,病理は多型腺腫であった。症例2は36歳の女性で,症例1同様に経口的に摘出し,病理は多型腺腫であった。症例3は75歳の女性で,経口的に摘出たところ腺様囊胞癌の診断で,術後照射を行った。症例4は75歳の男性で,術前に粘表皮癌,肺転移の診断であったが,終末期のQOL等も考慮し摘出術を行った。術後約1年で原病死となった。
    耳鼻咽喉科医は小唾液腺腫瘍を経験することは少ないが,大唾液腺に比べると悪性腫瘍の確率が高く,臨床所見と画像所見と組織診断により総合的に診断する必要がある。
  • 松井 祐興, 小池 修治, 那須 隆, 石田 晃弘, 欠畑 誠治
    2017 年 27 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    頰脂肪体は上顎突起と下顎骨・頰骨の間に存在する脂肪塊で咀嚼筋と骨の間の緩衝材となっている。頰脂肪体は個体の体重や栄養状態に関わらずほぼ一定であり,口腔腫瘍切除後の欠損部の再建に用いること可能である。頰脂肪体による再建は,遊離組織移植に比べ簡便であり低侵襲であり,血行も安定していることから口腔内の小範囲の欠損に対しては非常に有用な移植弁である。今回われわれは耐術能が高くない2症例に対して,口腔癌の切除後の欠損部に対し頰脂肪体を用いた再建を行い良好な結果を得た。頰脂肪体移植による再建は,高齢者や合併症のため長時間手術ができない症例において,比較的小さな切除後の欠損に対して,簡便で低侵襲な方法であると考えた。
  • 野村 研一郎, 片山 昭公, 高原 幹, 長門 利純, 岸部 幹, 上田 征吾, 片田 彰博, 林 達哉, 原渕 保明
    2017 年 27 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,術前に良性と診断された結節性甲状腺腫に対して行った内視鏡下甲状腺手術(Video-assisted neck surgery, VANS法)の治療成績を評価することである。2009年5月から2016年3月までに当科で結節性甲状腺腫に対してVANS法を行った症例(VANS群)は182例,通常襟状切開の手術症例(通常切開群)は103例存在し,これら二群の治療成績を比較検討した。VANS群は全例で通常切開への移行を必要とせず完遂され,術中出血量,合併症発生率は二群間で有意差を認めなかった。良性結節性甲状腺腫に対するVANS法は通常切開と比較し安全性に問題ない術式であることが確認された。
  • 松木 崇, 三浦 弘規, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 伏見 千宙, 岡田 拓朗, 丹羽 一友, 岡本 伊作
    2017 年 27 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    当センターにおける副咽頭間隙多形腺腫45例の手術症例に対して検討を行った。患者背景は男性:女性が17:28,年齢の中央値は47歳,すべて茎突前区由来であった。腫瘍最大径に関わらずすべて経頸部法で摘出できた。手術時間は中央値86分,出血量は中央値50mlであり,術後合併症は顔面神経麻痺が12例で大半が一過性の下顎縁枝不全麻痺,first bite syndromeが11例であった。副咽頭間隙多形腺腫は経頸部法でほとんどが永続的な術後合併症なく摘出可能と考えられた。術前FNAを施行できた35例において97.1%でclass IIIまで,71.4%で多形腺腫と診断できており,FNAは有用と思われた。
  • 坂井 梓, 中尾 一成, 岸下 定弘, 岩城 弘尚, 小村 豪
    2017 年 27 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症術後に低カルシウム血症を来す予測因子を明らかにすることを目的に検討を行った。2003年4月から2013年4月の10年間に当院にて施行された原発性副甲状腺機能亢進症手術症例14例を対象とし,後ろ向きに検討した。年齢は39歳~82歳(平均年齢64.6歳),全例に副甲状腺腫瘍摘出術を施行,このうち5例で甲状腺片葉を合併切除した。切除標本の病理診断では14例全例で腺腫との診断で過形成,癌腫は認めなかった。薬剤投与を行ったにも関わらず術後4日目以降に血中カルシウム濃度が8.5mg/dl以下となり,持続した例を低カルシウム血症群,そうでない例をカルシウム正常群として2つに分類した所,低カルシウム血症群は4例,カルシウム正常群は10例であった。低カルシウム血症群はカルシウム正常群と比較して術前血中BUN,ALP,カルシウム,PTH,リン濃度は高い傾向を示したが,2群間で有意差をもって高値だったのはALP濃度のみであった。
  • 伏見 千宙, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 松木 崇, 菅野 千敬, 岡田 拓郎, 佐々木 剛史, 丹羽 一友, 町田 智正, 三浦 弘規, ...
    2017 年 27 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    2005年4月から2012年3月までの7年間に,当センターで初回治療として手術を行い,病理組織学的に顎下腺癌と診断された12例について後ろ向きに解析した。
    12例の内訳は腺様囊胞癌4例,唾液腺導管癌4例,上皮筋上皮癌2例,粘表皮癌1例,carcinoma 1例であった。病期分類では,I期:1例,II期:5例,III期:2例,IV A期:3例・IV C期:1例であった。全症例の5年粗生存率は62%であった。治療成績に影響を与える因子は,臨床病期と頸部リンパ節転移の有無があげられた。
症例
  • 森田 勲, 渡邉 佳紀, 田中 信三, 平塚 康之, 吉田 尚生, 草野 純子, 吉松 誠芳, 松永 桃子, 中尾 信裕
    2017 年 27 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは甲状腺扁平上皮癌が疑われた頸部胸腺腫の1例を経験したので報告する。症例は74歳女性。主訴は前頸部左側の腫瘤。頸部造影CTで甲状腺左葉下極と境界不明瞭な腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診の結果は扁平上皮癌疑いであった。頭頸部領域や食道,肺に明らかな原発巣を疑う所見はなかった。よって甲状腺扁平上皮癌と診断し,根治手術を施行。病理組織診断は胸腺腫であり,癌腫はなかった。NCCNの胸腺腫臨床診療ガイドラインに則し,術後放射線治療(54Gy)を行った。甲状腺下極付近の腫瘤で扁平上皮癌が疑われた場合は,まず原発巣の検索を行い,明らかな病巣がなければ胸腺腫も念頭におく必要があると思われた。
  • 吉田 亜由, 栗田 宣彦, 竹内 成夫, 畑 裕子, 奥野 妙子
    2017 年 27 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    頭頸部外科領域において,放射線治療後の術後縫合不全はしばしば閉鎖に難渋する。今回われわれは,放射線治療後の再発喉頭癌に対して施行した喉頭全摘出術後に生じた難治性咽頭瘻にフィブリン糊製剤を使用し閉鎖に至った1例を経験した。デブリードマンおよび前胸筋皮弁作成等による感染の制御や局所処置継続による肉芽増生を促進したが,pin hole状の咽頭皮膚瘻が残存した。救済手術から184日目にフィブリン糊製剤を瘻孔内に充填したところ,咽頭皮膚瘻の閉鎖が得られ,その後は再発なく経過している。フィブリン糊の使用方法は簡便であり,瘻孔の縮小はあるものの閉鎖には至らない症例でフィブリン糊製剤充填による閉鎖が有効である可能性が示唆された。
  • 吉福 孝介, 松崎 勉, 西元 謙吾, 青木 恵美
    2017 年 27 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    頸部神経鞘腫は頸部に発生する神経原性腫瘍のうち90%以上を占め,頭頸部においては旁咽頭間隙,頸動脈鞘周囲に発生する。今回22歳女性の後頸部に発生した神経鞘腫症例を経験したので報告する。約2年前からの後頸部腫瘤を主訴に当院を受診し,画像検査にて神経鞘腫が疑われた。診断的加療目的に摘出術を施行し神経鞘腫の診断を得た。耳鼻咽喉科頭頸部外科医にとって後頸部深層の手術は遭遇することがまれな術野と考えられる。本症例では以前の報告をもとに解剖を確認し腫瘍を摘出した。
  • 次郎丸 梨那, 松尾 美央子
    2017 年 27 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌領域で脳転移を経験する場合,多くは多臓器転移後であるが,稀に初診時から単発性脳転移をきたす場合がある。症例は71歳の男性で,嚥下時痛を主訴に当科を受診した。精査にて下咽頭から頸部食道に進展する扁平上皮癌を認めた。単発性脳転移以外は,他臓器への遠隔転移なく,全身状態良好なため,優先的に開頭腫瘍摘出術を施行。術後3週間目から原発巣に対し化学放射線療法を行った。その後外来化学療法を続け,脳転移や局所の再燃なく,12か月生存中である。初診時から遠隔転移を有する場合,治療選択に難渋することが多いが,条件を満たせば局所よりも優先して脳転移への積極的治療を行う事は,その後のQOLの維持に重要と思われた。
  • 阿久津 誠, 金谷 洋明, 今野 渉, 常見 泰弘, 中島 逸男, 平林 秀樹, 春名 眞一
    2017 年 27 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    Glomangiopericytomaはsinonasal-type hemangiopericytomaとも呼ばれ,その発生母地はglomus器官由来の筋様細胞とされており,鼻副鼻腔粘膜下に発生する腫瘍である。同部に占める発生頻度は0.5%以下と非常にまれであり,2005年のWHO分類改定により制定された比較的新しい疾患概念である。5年生存率は90%以上と比較的予後良好な腫瘍であるが,その腫瘍径や病理組織像によってaggressive typeに分類されるものが存在する。進行型腫瘍の場合,局所再発や遠隔転移をきたすことがあるため,経過観察には注意を要する。今回われわれは気道閉塞により気管切開を要し,内視鏡下鼻内手術により完全切除が可能であった,まれな小児期発症のaggressive type glomangiopericytomaの1症例を経験したので報告する。
  • 中島 隆博, 波多野 篤, 結束 寿, 原山 幸久, 森 恵莉, 鴻 信義, 小島 博己
    2017 年 27 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    【緒言】胸腺囊胞は胎生期に発生した胸腺咽頭管の遺残や異所性胸腺が液体貯留を起こしたもので,頸部に発生する例はまれである。今回頸部胸腺囊胞の1例を経験したので報告する。【症例】57歳,女性。3か月前から増大する右頸部腫瘤等を訴え当院受診した。画像検査上,右顎下部から頸動脈周囲腔に多房性の囊胞性腫瘤像を認めた。リンパ管奇形疑いの術前診断後,腫瘤摘出術を施行した。術後の病理組織検査で胸腺組織を認めたため頸部胸腺囊胞と診断された。【結語】本症例は,胸腺囊胞に特徴的な縦隔と腫瘤との連続性を画像検査にて認めず,術前の診断は困難であった。頸部囊胞性病変の診断,治療においては,頸部胸腺囊胞を鑑別に置く必要がある。
  • 水成 陽介, 濱 孝憲, 西谷 友樹雄, 結束 寿, 須田 稔士, 小島 博己
    2017 年 27 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    喉頭壊死症は喉頭の循環障害に起因する稀な病態である。今回,下咽頭癌に対する化学放射線療法後,比較的早期に喉頭壊死症を発症した症例を経験した。症例は58歳男性で,下咽頭癌および食道癌の同時重複癌に対して化学放射線療法を施行するも治療終了3か月後に咽頭痛および下咽頭原発部位に粘膜の壊死性病変が出現した。保存的加療では改善せず,生検では癌の再発の診断に至らなかった。壊死性病変の急速な増悪を認め,頸動脈破綻等の致死的な状況を回避するために救済手術(喉頭摘出)を施行した。本症例では重複癌により放射線照射範囲が広かったことと,原発部位に感染巣を形成したことが早期に喉頭壊死をきたす原因となったと考えられた。
  • 林 一樹, 篠原 尚吾, 末廣 篤, 岸本 逸平, 原田 博之, 佐藤 悠城, 上原 慶一郎
    2017 年 27 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    PTTM(肺腫瘍血栓性微小血管症:pulmonary tumor thrombotic microangiopathy)は肺動脈の微小腫瘍塞栓により肺高血圧症を来す病態で,急激に呼吸困難を来し,多くは短期間で死亡する。CTにて肺野に異常所見を認めず,肺動脈に血栓や塞栓を認めないので,生前に診断することは困難とされている。今回われわれは換気血流シンチにて疑い,経気管支肺生検で確定診断した,舌下腺腺様囊胞癌に伴うPTTM症例を経験した。抗凝固・化学療法を施行したが,入院25日目に呼吸不全のため死亡された。病理解剖にて多数の末梢肺血管内に微小腫瘍塞栓と内膜線維性肥厚を認め,組織学的にもPTTMと診断した。
  • 西谷 友樹雄, 濱 孝憲, 飯村 慈朗, 結束 寿, 須田 稔士, 鴻 信義, 小島 博己
    2017 年 27 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    glomangiopericytomaは鼻腔に発生するまれな低悪性腫瘍である。血流豊富な腫瘍で,術前に血管塞栓術が施行される場合がある。術前に血管塞栓術を行わず内視鏡下鼻内手術で腫瘍を摘出した,鼻中隔後方に発生したglomangiopericytomaの症例を経験した。本邦におけるglomangiopericytomaは蝶口蓋動脈領域に発生した報告が多く,一塊摘出可能である,術中蝶口蓋孔の視野が確保できる,副鼻腔を超えた進展がない,生検時に大量出血していない症例では血管塞栓術を行わずに内視鏡下手術の適応があると考えられた。
手技工夫
  • 荒井 康裕, 佐野 大佑, 小松 正規, 田口 享秀, 西村 剛志, 矢吹 健一郎, 折舘 伸彦
    2017 年 27 巻 1 号 p. 129-133
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    上顎全摘術では,外切開による軟部組織の処理,骨削開を行い,翼状突起の切断にはノミが使用される。しかし,良好な視野が得られない中での操作になることや頭蓋底が近いことによる恐怖心のために切除ラインが術前の想定通りとならない可能性が指摘されてきた。上顎全摘術において,外切開に先立ち内視鏡下で鼻腔内の粘膜切断,骨削開を施行することにより,術前に予定した切除ラインで摘出が可能であった上顎洞悪性腫瘍例を経験した。内視鏡併用により,鼻腔内の軟部組織だけでなく,翼状突起,蝶形骨と厚い部分の骨削開を内視鏡下の良好な視野であらかじめ行っておくことで,外側から想定通りの骨切りラインでの切断が容易になると考えられた。
  • 森 照茂, 大内 陽平, 高橋 幸稔, 岸野 毅日人, 星川 広史
    2017 年 27 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/08/24
    ジャーナル フリー
    経口的咽喉頭癌手術は咽喉頭癌において低侵襲手術として広く知れ渡っている。本邦においては,特に下咽頭癌病変に関しては佐藤式彎曲型喉頭鏡を用いたELPSが行われるようになってきた。定型的には上部消化管用軟性内視鏡を用いて術野の観察を行うが,その操作には十分な経験が必要であり通常は消化器内視鏡医とともに手術を行うことが多い。しかしながらマンパワーの問題,施設においては人員配置の問題などがあり,手術日程の調整が難しいことがある。当科はELPS導入時より全症例において耳鼻咽喉科・頭頸部外科医のみで同手術手技を行っている。本稿では当科の行っているELPS手技についてその特徴・問題点などについて整理し,紹介する。
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