2018 年 27 巻 3 号 p. 301-306
耳硬化症の基本術式はアブミ骨の上部構造を摘除して底に小開窓を作成し,同部にピストンを挿入,その対側端をキヌタ骨長脚に結びつけることを基本としてきた。このアブミ骨上部構造の摘出の際,予期せぬtotal stapedectomy,floating footplateとなることがあり,その操作には緊張が強いられる。そこでアブミ骨操作としては底に小開窓を作るのみとして,キヌタ骨の可動性を得るためにその豆状突起を摘除する術式「アブミ骨上部構造保存アブミ骨手術」を考案した。この術式による40例の平均気導聴力改善18.9dB,気骨導差20dB以内90%と良好であり,術後5年間の聴力も安定していた。