抄録
Fanconi貧血は遺伝性骨髄不全疾患であり,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群,急性骨髄性白血病,固形癌を高率に合併する。本疾患患者では,化学療法や放射線治療によって重篤な有害事象や誘発癌が発生するリスクが高く,併発癌に対しては外科的切除が第一選択治療となる。われわれは今回,Fanconi貧血に下咽頭癌を併発したまれな症例を経験した。症例は25歳男性で,Fanconi貧血の治療として17歳時に骨髄移植を受けている。咽頭違和感を初発症状として受診し,内視鏡検査とCT検査にて下咽頭後壁扁平上皮癌T2N0M0の診断となり,内視鏡下咽喉頭手術による腫瘍切除を受けた。右声帯麻痺以外の合併症はなく,術後1年4か月経過した現在,再発なく経過良好である。