抄録
舌に発生する乳頭腫は過去より多数の報告があり,また臨床の場においては癌化の可能性があることから切除を勧められる事が多い疾患である。しかし,その癌化過程の病理像や癌の発生機序については明らかにされていない。
本症例は48歳女性。左舌下面に腫瘤を認め,外来での鉗除生検結果は内反性乳頭腫の診断であった。癌化の可能性を考慮し,舌部分切除を施行した。手術検体の永久標本では乳頭状構造,内反様構造を呈する異型重層扁平上皮の増殖を認め,その一部から発生するようにp53の領域性の蓄積,p16陰性,BerEP4・EGFR陽性を認め,Squamous cell carcinoma arising from inverted papilloma on tongueとなった。