抄録
甲状軟骨浸潤を伴う再発甲状腺癌に対し,喉頭部分切除を施行し喉頭機能を温存した1例を経験した。症例は47歳男性。他院にて甲状腺乳頭癌に対し甲状腺全摘・右頸部郭清を施行し,6年後に甲状軟骨に浸潤する再発病変を指摘され当科紹介となった。CT上,甲状軟骨右板に浸潤する最大径39mmの腫瘍を認めたが,喉頭への浸潤は傍声帯間隙に留まり喉頭温存可能と判断した。手術は甲状軟骨右側板を腫瘍と一塊にして切除した。梨状陥凹の粘膜は剥離温存可能であった。術後1年の現在,再発なく経過している。甲状腺分化癌の喉頭浸潤症例の機能温存術は,腫瘍が喉頭内腔に達せず,かつ甲状軟骨の前後径が保持される際には検討する余地があると考えられた。