抄録
下咽頭脂肪肉腫はまれな疾患であり,高分化型脂肪肉腫は肉眼所見,画像所見,病理所見が脂肪腫に類似している。今回,われわれは診断に難渋し,最終的に咽喉頭食道摘出術,遊離空腸再建術を施行した症例を経験したので報告する。
症例は62歳男性。下咽頭に腫瘤を指摘され,下咽頭脂肪腫と診断された。顕微鏡下に経口的に摘出を行うも10年間で2度再発を認め,咽頭外切開での全切除術を行い,高分化型脂肪肉腫が疑われた。初診の18年後,嚥下性肺炎を契機に3回目の再発を認め,患者の経口摂取希望をふまえ,最終的に咽喉食摘術,遊離空腸再建術を施行した。食道断端は断端陽性が否定できないが,術後24か月を経た現在も再発なく外来経過観察中である。