2020 年 30 巻 3 号 p. 385-389
血液透析患者の頸部に発生したtumoral calcinosis(腫瘍状石灰沈着症)の1例を経験した。症例は48歳,女性。13年前に痛風を発症し,腎機能障害のため4年前より血液透析を行っていた。初診の6か月ほど前より増大傾向のある右頸部腫瘤を自覚し,上肢のしびれや挙上制限が続発した。画像上は著明な石灰化を呈しており,神経症状の改善を目的に摘出術を施行した。術後速やかに症状は改善し,病理検査で石灰沈着と異物型巨細胞性肉芽腫の所見がみられ,腫瘍状石灰沈着症の診断となった。頸部のtumoral calcinosisは稀な疾患であるが,石灰化を伴う頸部腫瘤の鑑別診断として考慮する必要がある。