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江川 峻哉, 丸山 祐樹, 上村 佐和, 安藤 いづみ, 水吉 朋美, 櫛橋 幸民, 池田 賢一郎, 小林 一女, 嶋根 俊和
2020 年30 巻3 号 p.
265-269
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
外科手術手技の習得には解剖学的知識,手術器具の正しい運用,手術手技についての知識と経験が必要である。手術手技のトレーニング方法は上級医の手術に助手として参加して実際の手術手技を学ぶon the job training(OnJT)・模型やシミュレーターを用いるdry labo training(DLT)・ヒト以外の生体を用いるwet labo training(WLT)などに分類されるが,頭頸部領域ではいまだ報告が少ない。そこで今回われわれは頭頸部手術の習熟のため生体モデルを用いて手術トレーニングを実施し,その有効性を確認するためトレーニング前後でアンケートをとり自己習熟度評価を検討した。対象はトレーニングに参加した24名の医師のうち指導する立場として参加した5名を除く19名で,項目はメスの取り扱い・電気メスの取り扱い・エネルギーデバイスの操作・縫合操作・剥離操作・結紮操作・神経血管同定・神経血管操作についての8項目について1から10段階のNumeric Rating Scale(NRS)を用いて点数化し,トレーニング前後で2群間比較した。結果,自己習熟度評価は全項目で上昇し,トレーニングは手技の向上において有意に有効な結果であった。生体モデルを用いたトレーニングは技術の向上や医療安全の面からも有用であると考えられる。
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松本 浩平, 佐藤 智生, 金子 賢一, 熊井 良彦
2020 年30 巻3 号 p.
271-275
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
頭頸部扁平上皮癌の放射線治療における治療開始の遅延は予後に影響するとされる。治療待機期間を延長させる要因を明らかにするために,診療録を用いて後方視的に検討したので報告する。対象は2017年4月1日-2019年3月31日の期間に当科で治療を施行した49例とした。治療待機期間の中央値は38日だった。原発巣が下咽頭だと,中咽頭,喉頭よりも治療待機期間が長かった。初診診療科が耳鼻咽喉科だと治療待機期間が短くなる傾向を認めた。
下咽頭癌は発見,診断が遅れる傾向にあり,診察に注意を要する。一般市民への啓発活動などで,頭頸部癌を疑う症状を認める際は耳鼻咽喉科への受診を誘導する必要性があると考える。
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高橋 剛史, 山崎 恵介, 竹内 美香, 正道 隆介, 太田 久幸, 植木 雄志, 堀井 新
2020 年30 巻3 号 p.
277-283
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
近赤外線装置を用いた副甲状腺の自家蛍光観察は,無侵襲で簡便に副甲状腺の探索や確認ができ,甲状腺手術あるいは副甲状腺手術に有用である。今回われわれは,副甲状腺の自家蛍光が観察可能な既製の2種類の近赤外線装置pde-neo®(浜松ホトニクス)/FLUOBEAM 800®(FLUOPTICS)を同一症例で使用し,性能の比較を行った。両機器ともに副甲状腺の自家蛍光は甲状腺より高く,両者の間で副甲状腺/甲状腺の蛍光輝度比に差はなかった。機器の特徴を比較した結果,切除組織からの自家移植目的での副甲状腺の探索にはpde-neo®が,術野における副甲状腺の探索にはFLUOBEAM 800®が優れていると思われた。
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石永 一, 中村 哲, 千代延 和貴, 平田 智也, 石神 瑛亮, 竹内 万彦
2020 年30 巻3 号 p.
285-290
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
2009年から2018年の間に当科で治療を行った未治療例の顎下腺癌症例22例を検討した。3年ならびに5年粗生存率は79.4%であり,3年ならびに5年無再発生存率は69.8%であった。再発例はいずれも遠隔転移を示しており,6例の遠隔転移例中,4例が原病死しており,2例が担癌生存中であった。多変量解析ではリンパ節転移陽性が重要な再発予測因子と判明した。われわれの検討では,顎下腺癌は主に遠隔転移によって死亡するということが示唆された。
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松見 文晶, 三ッ井 瑞季, 室野 重之
2020 年30 巻3 号 p.
291-296
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
われわれは,耳鼻咽喉科医単独で涙道外・経内眼角ライトガイド法を用いて施行した涙道ステントを留置しない涙囊鼻腔吻合術鼻内法(endoscopic dacryocystorhinostomy without stenting;En-DCR-WOS)と,涙道ステントを留置したEn-DCRのリノストミー所見,成功率の比較検討を行った。En-DCR-WOS群14側では93%で楕円形で大きなリノストミーが得られ,解剖学的成功率は100%,機能的成功率は93%であり,涙道ステント留置群23側と比較しても劣らない結果であった。耳鼻咽喉科医単独施行のEn-DCR-WOSでも質は担保されると考えられた。
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今泉 冴恵, 川北 大介, 的場 拓磨, 高野 学, 小栗 恵介, 蓑原 潔, 岩城 翔, 柘植 博之, 岩﨑 真一
2020 年30 巻3 号 p.
297-302
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
耳下腺癌はその希少性と組織型の多様性から,手術治療が第一選択となる。本研究では,名古屋市立大学病院で手術治療を行った耳下腺癌72症例を対象に後方視的検討を行った。観察期間中央値は3.5年,3年全生存率は87.5%,3年無病生存率は69.1%であった。主な組織型は唾液腺導管癌22例,粘表皮癌15例,多形腺腫由来癌9例であった。術後照射は36例で施行され,StageⅢ以上の症例では予後を改善する可能性が示唆された。再発を認めた22例のうち遠隔転移は17例でみられ,組織型は唾液腺導管癌が最多であった。予後の改善には全身化学療法の確立など遠隔転移の制御が課題であると考えられた。
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中村 匡孝, 門田 伸也, 岸野 毅日人, 青井 二郎, 秋定 直樹, 林 祐志, 髙橋 紗央里
2020 年30 巻3 号 p.
303-308
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
目的:甲状腺乳頭癌に関して,N1a,N1b症例における遠隔転移について検討し,外側区域リンパ節転移の遠隔転移に対するリスク要因としての意義を明確にする。
対象:当科で手術加療を行った甲状腺乳頭癌427例の内,リンパ節転移を伴った218例。
結果:レベルⅤb,Ⅶに転移を認める場合,遠隔転移率が高かった。各リスク因子の内,年齢55歳以上,腫瘍径4cm以上,レベルⅤb+Ⅶへの転移で多変量解析の結果,有意に遠隔転移率が高かった。N1b群の88.9%にリンパ節節外浸潤を伴った。
結論:N1b特にレベルⅤb,Ⅶへの転移を有する場合には,頸部郭清術に加えて後治療を念頭に置いた甲状腺全摘術を第一選択とすべきであると考えられた。
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―早期舌癌患者における臨床病理学的評価および予防的頸部郭清術について―
深澤 雅彦, 春日井 滋, 三上 公志, 明石 愛美, 望月 文博, 神川 文彰, 岩武 桜子, 長宗我部 基弘, 肥塚 泉
2020 年30 巻3 号 p.
309-316
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
早期舌癌症例において潜在的頸部リンパ節転移を制御することは重要である。われわれは,手術加療を行った早期舌癌34症例について後方視的に検討を行った。内訳は舌部分切除術のみが27例で,4例で後発リンパ節転移を認め,内2例が現病死した。予防的頸部郭清術を併施したのは7例で,後発リンパ節転移は認めなかった。3年粗生存率は86.7%,3年疾患特異的生存率は93.8%であった。病理学的因子の検討では,depth of invasion(DOI)が潜在的頸部リンパ節転移を反映しており,術前から評価できれば,予防的頸部郭清術の適応基準となる可能性が示唆された。今後は,臨床的DOI評価の標準化が望まれる。
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飯村 慈朗, 白澤 一弘, 三浦 拓也, 齊藤 吉紀, 積山 真也, 柳原 健一, 細川 悠, 高石 慎也, 宮脇 剛司, 小島 博己, 鴻 ...
2020 年30 巻3 号 p.
317-323
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
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今回われわれが行っている鼻中隔弯曲症上弯に対する手術手技について報告する。対象は,鼻閉を主訴に2018年1月から2019年12月までに当科で上弯矯正術を行った10例である。手術方法は,1)open septorhinoplastyアプローチ(以下 OSRP),上弯矯正術は鼻骨骨切り,2)hemitransfixionアプローチ,上弯矯正術は若木骨折,3)OSRPアプローチ,上弯矯正術は鼻骨骨切りおよび若木骨折,である。手術方法1)は2例,2)は5例,3)は3例であり,全例鼻閉は改善し術後合併症はなかった。今後,耳鼻咽喉科医にとって上弯矯正術およびOSRPによる手術手技は必要な手技と考える。
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渡邉 佳紀, 平塚 康之, 安里 亮, 田中 信三, 吉田 尚生, 草野 純子, 田口 敦士, 田中 千智
2020 年30 巻3 号 p.
325-332
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
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咽喉頭がんに対する経口的鏡視下手術では,創面は被覆されず,出血,皮下気腫など報告がある。われわれは,口腔咽頭がん切除後の被覆法:MCFP(Mucosal defect covered with fibrin glue and polyglycolic acid sheet)を2010年から用い,咽喉頭用に改変し,安全性を検討したので報告する。対象は,当科で本法を用いた112例。平均年齢65歳。下咽頭癌(58.9%),T2病変(62.5%)が多く,深部浸潤癌が72.3%,扁平上皮癌が98.2%であった。合併症は出血2例(1.8%)のみで,非被覆法と比し低かった。本法は,経口的鏡視下手術後創面の安全な被覆法といえる。
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中谷 宏章, 福島 慶, 竹内 薫
2020 年30 巻3 号 p.
333-337
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
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当科で手術を施行した多形腺腫初回手術25例において手術所見や病理所見から腫瘍細胞播種リスクを検討した。その結果,元々の腫瘍の耳下腺外露出や顔面神経の接触等により20例で腫瘍露出がみられた。被膜欠損や腫瘍細胞の被膜内浸潤,偽足,衛星病変などの被膜病変はclassic typeやmyxoid typeで90%,全体では20例(80%)に認められ,うち15例では腫瘍細胞播種のリスクとなる腫瘍の露出があった。高い腫瘍細胞播種リスクにも拘わらず実際の再発率が低いことは,十分慎重に手術を行えば細胞播種を起こさずに手術ができることを示すものと考えられた。
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平野 隆, 安倍 伸幸, 森山 宗仁, 柴田 智隆, 武野 慎祐, 猪股 雅史, 鈴木 正志
2020 年30 巻3 号 p.
339-345
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
今回,当科において2006年6月〜2018年12月の間,頭頸部領域に放射線治療を行われた既往のある頭頸部癌6症例に対して遊離空腸パッチを用いた再建を行った。男性5例,女性1例であり,平均年齢は56.3歳であった。対象疾患は下咽頭癌2例,中咽頭癌2例,喉頭癌2例であった。全例,腫瘍の再発,異時性重複癌症例であった。手術は腫瘍摘出後に遊離空腸の上腸間膜動静脈を栄養血管として採取し,腸管に縦切開を加えパッチとして欠損部分を被覆している。全例,術後遊離粘膜弁壊死を含めた術後合併症を認めず,咽頭瘻孔も認めなかった。放射線治療後の頭頸部再建において遊離空腸パッチは有用であると考えられた。
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星 裕太, 鈴木 政美
2020 年30 巻3 号 p.
347-352
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
症例は59歳男性,右頸部腫脹を主訴に受診した。右舌根部から生検を行い,扁平上皮癌であり,中咽頭癌 (T1N2bM0:UICC第7版) と診断した。しかし,治療開始前に患者が通院を自己中断した。その後右頸部腫脹が増悪し,初診から8年11か月後の再診時には中咽頭癌 (T3N3M0:UICC第7版)と診断した。9年後に治療を開始したが,9年6か月後に多発肺転移が出現し,10年9か月後に死亡した。頭頸部扁平上皮癌において無治療の場合には予後不良である。しかし,本症例は初診時に予後良好な因子を多く満たしており,無治療でも長期生存したと推察された。また無治療の中咽頭癌の予後について,p16陽性の有無での腫瘍の増大速度に注目して検討した。
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廣瀬 智紀, 美内 慎也, 毛利 武士, 阪上 雅史
2020 年30 巻3 号 p.
353-357
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
アブミ骨手術は他の耳小骨再建術よりも術後聴力成績が良好であるとされているが,満足のいく聴力改善が得られずに再手術が行われる症例を経験することがある。症例は先天性アブミ骨固着症と診断された7歳女児で,両側に複数回のアブミ骨手術を要した。本例においてテフロンワイヤーピストンからテフロンピストンに変更することで聴力が安定したことから,テフロンワイヤーピストンが脱落した症例において長めのテフロンピストンが有効であると考えられた。また本例では複数回手術後も電気味覚閾値は正常であり,耳手術による鼓索神経障害は成人より小児の方が回復しやすいと考えられた。
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戸嶋 一郎, 村尾 拓哉, 山本 小百合, 清水 猛史
2020 年30 巻3 号 p.
359-366
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
鼻副鼻腔未分化癌はまれな高悪性度腫瘍で,急速に進行し,早期から眼窩や頭蓋底などの周辺臓器に進展しやすく,また遠隔転移を来しやすい。標準治療法が定まっておらず,一般的には手術を含めた集学的治療が選択されることが多い。今回,頭蓋底浸潤を伴った局所進行鼻副鼻腔未分化癌(T4bN0M0)の2症例に対し,シスプラチン・エトポシド(PE療法)を導入化学療法として行ったのち,PE療法を併用した根治的化学放射線療法を行い,良好な局所制御が得られた。導入化学療法で十分な縮小効果が得られない症例に対しても同化学放射線療法により良好な局所制御が得られ,本療法は局所進行鼻副鼻腔未分化癌に対する有効な選択肢のひとつとなりうる。
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三根 実穂子, 下田 光, 入谷 啓介, 蓼原 瞬, 古川 竜也, 四宮 弘隆, 手島 直則, 大月 直樹, 丹生 健一
2020 年30 巻3 号 p.
367-372
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
過去3年間の甲状腺,副甲状腺手術症例190例で右151側中3側(1.9%)に,左145側中1側(0.7%)に非反回下喉頭神経(NRILN)を経験した。症例は67歳男性 右下副甲状腺腺腫,70歳女性 乳頭癌
cT1N0M0,65歳女性 乳頭癌cT4aN0M0,38歳男性 腺腫様甲状腺腫で,それぞれ副甲状腺腺腫摘出術,甲状腺右葉切除術,甲状腺全摘術,甲状腺左葉切除術を施行した。3例で右NRILNを,1例で左NRILNを認めた。特に左NRILNは極めて稀で,過去の文献を踏まえても本症例が6例目の報告となる。全症例において術前CTで同側の鎖骨下動脈起始異常を認めており,術前CTで動脈の走行異常を確認する重要性が再認識された。
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佐分利 純代, 杉山 庸一郎, 宗川 亮人, 小澤 聡美, 村上 賢太郎, 橋本 慶子, 椋代 茂之, 平野 滋
2020 年30 巻3 号 p.
373-377
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
喉頭軟骨肉腫は喉頭原発悪性腫瘍の1%以下と稀な腫瘍である。喉頭を温存し摘出した輪状軟骨原発の喉頭軟骨肉腫症例を報告する。
50代男性,他院にて喉頭軟骨腫疑いとして6年間経過観察中,腫瘍の緩徐な増大傾向と声門下狭窄をきたし,当院紹介となった。輪状軟骨後壁に存在する腫瘍を,喉頭截開を行い明視下に置いた。腫瘍を摘出後,喉頭枠組み構造が保たれていたため喉頭を温存した。病理組織検査では軟骨肉腫GradeⅠの診断であった。現在外来にて経過観察中であり,術後2年経過時点で明らかな再発を認めていない。
喉頭軟骨肉腫では腫瘍の伸展範囲,増大傾向を考慮し,可能であれば喉頭温存術式を選択すべきである。
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松塚 崇, 鈴木 政博, 垣野内 景, 室野 重之
2020 年30 巻3 号 p.
379-384
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
梨状陥凹瘻は咽頭囊の遺残による先天奇形で,甲状腺炎の感染経路となる。福島県の甲状腺検査(FUTE)を受け手術した2例を報告する。
症例1は14歳女性,症例2は15歳女性である。FUTEの超音波検査とほかの検査を行い,それぞれ右,左の梨状陥凹瘻と診断し瘻管摘出術を行っている。2例のFUTEの超音波検査で甲状軟骨後外側から甲状腺を突き抜ける低エコーの管状構造と,甲状腺悪性腫瘍と鑑別を要する複数の所見を認めた。
甲状軟骨後外側から甲状腺を突き抜ける低エコーの管状構造は梨状陥凹瘻を疑う超音波所見であるが,甲状腺炎を生じると甲状腺悪性腫瘍と鑑別が難しく,ほかの検査と併せた診断が重要である。
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工藤 玲子, 阿部 尚央, 三國谷 由貴, 工藤 直美, 松原 篤
2020 年30 巻3 号 p.
385-389
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
血液透析患者の頸部に発生したtumoral calcinosis(腫瘍状石灰沈着症)の1例を経験した。症例は48歳,女性。13年前に痛風を発症し,腎機能障害のため4年前より血液透析を行っていた。初診の6か月ほど前より増大傾向のある右頸部腫瘤を自覚し,上肢のしびれや挙上制限が続発した。画像上は著明な石灰化を呈しており,神経症状の改善を目的に摘出術を施行した。術後速やかに症状は改善し,病理検査で石灰沈着と異物型巨細胞性肉芽腫の所見がみられ,腫瘍状石灰沈着症の診断となった。頸部のtumoral calcinosisは稀な疾患であるが,石灰化を伴う頸部腫瘤の鑑別診断として考慮する必要がある。
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竹本 剛, 折田 浩志, 岡﨑 吉紘
2020 年30 巻3 号 p.
391-394
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
症例は70歳,男性。主訴は吐血。自宅で突然の吐血を生じ,救急車にて当院に搬送された。既往歴として,7年前に下咽頭癌に対して放射線治療と右頸部郭清術を施行。4か月前に下咽頭癌再発に対して,咽喉食摘,遊離空腸による再建が施行されている。初診時,すでに止血状態であり,再建遊離空腸からの出血と考え保存的治療を行うも再出血を認め,全身麻酔下の観察で,再建遊離空腸右側の潰瘍と穿孔,それに伴う外頸動脈仮性動脈瘤破裂による出血と診断した。血管内治療で外頸動脈を塞栓して止血を行った後,壊死した遊離空腸の部分切除と大胸筋皮弁による再建を行った。
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秋定 直樹, 門田 伸也, 波呂 卓, 岸野 毅日人, 青井 二郎, 林 祐志, 髙橋 紗央里, 中村 匡孝, 上田 陽子, 藤崎 智明
2020 年30 巻3 号 p.
395-400
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
後天性血友病Aは,凝固第Ⅷ因子に対する自己抗体が出現し出血症状を呈する疾患である。われわれはセツキシマブ併用放射線療法後に生じた後天性血友病Aの1例を経験した。症例は81歳,男性。20XX−5年に下咽頭癌に対しセツキシマブ併用放射線療法を施行しCRとなったが,20XX年に頰粘膜に出血を認め,後天性血友病と診断され現在治療中である。
後天性血友病の原因は様々な疾患が考えられているが,本疾患患者のうち17%は担癌状態との報告もある。悪性腫瘍治療後の患者が後天性血友病を発症した場合,再発・転移の可能性を考慮し一層注意深く経過観察を行う必要があることは,内科医のみならずわれわれ耳鼻咽喉・頭頸部外科医も留意すべきである。
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砂金 美紀, 山﨑 一樹, 越塚 慶一, 大木 雄示, 飯沼 智久, 木下 崇, 鈴木 猛司, 米倉 修二, 花澤 豊行
2020 年30 巻3 号 p.
401-408
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
良性対称性脂肪腫症(Madelung病)は頸部や躯幹,四肢などに対称性,多発性に脂肪が蓄積する疾患である。Madelung病の3例を経験したので考察を加えて報告する。症例1は76歳男性で,嗄声や嚥下障害,喉頭周囲の脂肪沈着を認めた。手術後の嚥下機能の悪化を懸念して経過観察の方針とした。症例2は61歳男性で,咽頭後間隙に脂肪組織を認め腫瘍摘出術を行った。症例3は72歳男性で,咽頭後および傍咽頭間隙に脂肪沈着を認め,腫瘍摘出術を行い整容的に高い満足度が得られた。本疾患では患者に整容的な改善の希望がある場合や気道閉塞,嚥下障害などの機能異常を認めた際には積極的に外科的治療を検討することが重要である。
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平井 友梨, 畠山 博充, 小松 正規, 柴田 邦彦, 磯野 泰大, 池宮城 秀崇, 大氣 大和, 鬼島 菜摘, 谷口 彩香, 福井 健太, ...
2020 年30 巻3 号 p.
409-414
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
下咽頭梨状陥凹瘻は多くが一側性であり,両側例は稀である。今回われわれは両側下咽頭梨状陥凹瘻の1例を経験した。
症例は22歳男性。左頸部痛を主訴に受診し,左頸部膿瘍を認めた。消炎後の嚥下造影およびCT検査より左下咽頭梨状陥凹瘻と診断された。瘻管摘出術の際に,彎曲型喉頭鏡を用いて喉頭展開をしたところ,より広い視野展開が可能となり,左だけでなくこれまでの画像検査で同定できなかった右側の瘻管を確認できた。左側の瘻管のみ外切開による摘出を行い,右側の瘻管は保存的に経過を見ることとした。今後,彎曲型喉頭鏡の使用により,画像検査では同定できない潜在的瘻管の増加が見込まれ,入念な術前のプランニングが求められる。
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松山 洋, 石岡 孝二郎, 若杉 亮, 鎌田 悠志
2020 年30 巻3 号 p.
415-419
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
Carcinoma cuniculatum(CC)は扁平上皮癌の亜型であり,組織学的には層状扁平上皮の増殖と基底層への浸潤がウサギの巣穴様構造(cuniculatum)を示す。臨床的には低悪性だが,骨破壊を伴って局所破壊性に緩徐進行することが多く,上顎や口腔での報告例は世界で50例程度と非常に稀である。
今回われわれが経験した症例は63歳女性で,前医で歯原性角化囊胞(odontogenic keratocyst:OKC)と診断され手術を施行するも,術後に眼窩内進展や鼻骨浸潤を含む広範な再燃を認めたために当科紹介となった。拡大切除を施行したところ,OKC成分を伴った左上顎CCの診断であった。
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宮地 祥多, 能田 淳平, 富岡 史行, 森 敏裕
2020 年30 巻3 号 p.
421-425
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
フリー
リンパ管腫は,胎生のリンパ管形成時期に異常を生じ形成される。また,80%以上の症例が2歳未満で発見されると報告がある。今回,OK-432が著効した成人リンパ管腫の1例を経験したので報告する。症例は60歳,男性。生下時より頸部腫瘤を認めていた。成人期の頸椎手術後より腫瘤は緩徐に増大傾向であり,58歳時より急速に増大したため,治療を希望され,当科受診された。リンパ管腫の治療法は,年齢や局在部位で摘出術あるいは硬化療法を選ぶ文献が散見される。本症例は術後の瘢痕醜形回避のため,硬化療法を選択した。硬化療法によりリンパ管腫は消失し,現在に至るまで再発を認めていない。
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籾山 香保, 松木 崇, 宮本 俊輔, 加納 孝一, 堤 翔平, 古木 綾子, 山下 拓
2020 年30 巻3 号 p.
427-431
発行日: 2020年
公開日: 2021/03/19
ジャーナル
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甲状舌管囊胞からは,稀に悪性腫瘍が発生する。われわれは甲状舌管囊胞に由来すると考えられた乳頭癌症例を経験した。症例は42歳女性で,5年前に自覚し増大傾向のある左前頸部腫瘤を主訴に受診した。左前頸部に20mm大の可動性良好な腫瘤を認め,エコーでは頭側は舌骨まで,尾側は甲状腺錐体葉まで索状物が連続していた。穿刺吸引細胞診で乳頭癌の所見を認め,甲状舌管癌と診断した。甲状腺癌の併発や頸部や遠隔への転移を疑う所見はなく,Sistrunk法で舌骨体部中央を含めて切除した。術後診断で切除断端陰性であったが,喉頭前リンパ節に転移を認めた。術後12か月現在,再発せずに経過している。
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