抄録
口腔癌に対する下顎区域切除術後に,遊離組織移植による再建を行わず,欠損部の一次縫合を行う術式がある。高齢や全身状態不良等を理由に耐術能に制限がある場合には,この術式は低侵襲手術として選択肢となる。しかし,この術式の報告は少ない。われわれは当科で施行した13例の患者背景,手術内容,術後経過,予後について調査した。症例は年齢中央値78歳,いずれも併存症あり,PS1以上,全例cT4aであった。下顎区域欠損範囲は主に側方を中心とし正中付近までであった。重篤な術後合併症はなく,摂食機能は保持されていた。局所再発は4例認めたが2例は救済可能であった。本術式は安全性と摂食機能が担保される事が示唆された。