頭頸部外科
Online ISSN : 1884-474X
Print ISSN : 1349-581X
ISSN-L : 1349-581X
31 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 安藤 喬明, 齊藤 祐毅, 坂井 利彦, 福岡 修, 明石 健, 吉田 昌史, 安藤 瑞生, 山岨 達也
    2022 年 31 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    【はじめに】シスプラチン感受性再発・遠隔転移頭頸部癌に対してEXTREMEレジメンは有意な生存期間の延長をもたらす。
    【方法】2015年〜2019年の間に当院で同レジメンを施行したシスプラチン抵抗性を除いた再発・転移頭頸部癌28症例について後方視的に予後因子解析を行った。
    【結果】1年全生存期間(OS)は60%,1年無増悪生存期間(PFS)は16%であった。原病診断からのシスプラチン総蓄積量が300mg/m2を超えた症例の1年OSは79%で,300mg/m2未満の症例に比して有意に良好であった。
    【考察】シスプラチンが十分投与できた症例が結果的に長期生存につながっていた。
  • 森下 洋平, 篠﨑 剛, 岡野 渉, 富岡 利文, 松浦 一登, 林 隆一
    2021 年 31 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    口腔癌に対する下顎区域切除術後に,遊離組織移植による再建を行わず,欠損部の一次縫合を行う術式がある。高齢や全身状態不良等を理由に耐術能に制限がある場合には,この術式は低侵襲手術として選択肢となる。しかし,この術式の報告は少ない。われわれは当科で施行した13例の患者背景,手術内容,術後経過,予後について調査した。症例は年齢中央値78歳,いずれも併存症あり,PS1以上,全例cT4aであった。下顎区域欠損範囲は主に側方を中心とし正中付近までであった。重篤な術後合併症はなく,摂食機能は保持されていた。局所再発は4例認めたが2例は救済可能であった。本術式は安全性と摂食機能が担保される事が示唆された。
  • 島 嘉秀, 中山 雅博, 松本 信, 井伊 里恵子, 宮本 秀高, 廣瀬 由紀, 田中 秀峰, 西村 文吾, 和田 哲郎, 田渕 経司
    2022 年 31 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    当科では上顎洞扁平上皮癌に対して根治手術,放射線療法,化学療法を併せた集学的治療を施行してきた。当科での治療成績を検証するため,2002年から2019年までの17年間に治療を行った上顎洞扁平上皮癌59例について3年粗生存率などの検討を行った。3年粗生存率は全体で64.4%,病期別ではStage Ⅰ,Ⅲ,ⅣA,ⅣBそれぞれ100%,100%,59.3%,18.2%であった。治療法別の3年粗生存率は術前照射+手術,手術±術後照射,(化学)放射線療法は90.0%,74.1%,41.0%であり,手術の有効性が示された。また,手術にて断端陽性例でも制御できている症例もあり,集学的治療が重要だと考えられた。
  • 草野 純子, 田中 信三, 平塚 康之, 渡邉 佳紀, 吉田 尚生, 北野 正之, 田口 敦士, 大江 健吾, 田中 千智, 藤川 詩織
    2022 年 31 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    2005年1月から2018年12月までの14年間に初回根治治療を行った喉頭扁平上皮癌266例(観察期間中央値44か月)の後ろ向き検討を行った。粗生存率は5年77%,10年60%,疾患特異的生存率は5年89%,10年88%であった。死亡例60例中,原病死は25例(合併症死7例を含む),他病死は30例,死因不明が5例であった。全症例の約41%が重複癌を有した。重複癌による他病死は25例と死亡例の40%以上を占め,肺と上部消化管を原発とするものがその上位を占めた。喉頭癌の腫瘍制御は良好であるが,さらなる生存率向上のために重複癌や治療後遺症にも留意すべきことが示唆された。
症例
  • 木村 有貴, 渡邉 昭仁, 谷口 雅信
    2022 年 31 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    頸部食道進展のある下咽頭後壁進行癌に対し,喉頭温存して完全切除するために経口的手術と外切開手術を併用する術式を施行した類基底細胞様扁平上皮癌(BSCC)の1症例を報告する。症例は65歳,女性。術前に全身麻酔下の観察で喉頭に進展がないことと頸部食道に進展していることを確認した。経口的に口側端を切離した後に外切開手術で病変の摘出と郭清および再建を施行した。喉頭挙上術にて嚥下機能保持策を講じたが,術後に誤嚥性肺炎を反復した。1,200kcal/日程度を3食で摂取できる状態となり術後8週目に退院した。発声に問題なく,術後2年11か月現在,再発転移を認めていない。
  • 大森 良彦, 寺田 友紀, 黒田 一毅, 都築 建三
    2022 年 31 巻 3 号 p. 253-256
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    魚骨異物は,視診や内視鏡検査で確認されることが多いが,口腔や咽頭の粘膜下に迷入した場合は,診断および摘出が困難となることが多い。今回われわれは舌内に迷入した魚骨異物を経験したため報告する。
    症例は,87歳男性。主訴は舌違和感。魚骨誤飲後約1か月に近医耳鼻咽喉科を受診し,CT検査にて舌内に迷入した魚骨が疑われたため当科紹介となった。視診上は異物を確認できなかったが,CT検査や超音波検査にて舌内に迷入した異物を確認できたため,全身麻酔下に術中超音波検査にて異物を同定しながら摘出を行った。
    比較的希な舌内に迷入した魚骨異物症例を経験した。本症例では,術前CT検査での検出や術中超音波検査での同定が有用であった。
  • 森 彩加, 田中 藤信, 吉田 晴郎, 山本 昌和, 伊東 正博, 三浦 史郎
    2021 年 31 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    甲状舌管囊胞では囊胞内の異所性甲状腺組織より稀に癌が発生することがある。われわれは甲状舌管囊胞内の異所性甲状腺に乳頭癌を発生した症例を経験したので報告する。症例は18歳女性で前頸部の腫脹を主訴に当科を受診した。舌骨の尾側ほぼ正中に腫瘤を認め,MRIで前頸筋,甲状軟骨への浸潤が疑われた。穿刺吸引細胞診ではclass Ⅴで乳頭癌が疑われた。以上の結果より甲状舌管癌を疑い手術の方針とした。画像で浸潤を疑う周囲組織を合併切除し,また甲状腺錐体葉からの癌の発生を考慮して錐体葉につながる甲状腺峡部も合併切除した。切除検体にて異所性甲状腺と連続する囊胞内に浸潤性に増殖する乳頭癌を認めた。甲状舌管囊胞には1%程度の割合で癌が発生すると報告されており,稀な疾患であるが診断時には鑑別におく必要がある。
  • 関 正大, 深堀 光緒子, 小野 剛治, 末吉 慎太郎, 梅野 博仁
    2021 年 31 巻 3 号 p. 263-266
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    頸部には重要臓器が密集しており,損傷により致死的状態に陥ることがある。今回,出血性ショックに至ったガラス片による穿通性頸部外傷症例を経験した。症例は47歳男性,脚立から転落しガラス戸で頸部を受傷し救急搬送された。画像検査で,両側頸動静脈近傍にガラス片と思われる異物を確認し,摘出術を施行した。術中に内頸静脈からの活動性出血を認め,損傷部位を縫合し止血した。穿通性頸部外傷例では,見た目以上に深部損傷が重篤である可能性がある。また異物埋入の可能性も念頭に置き画像検査を行い,異物摘出を試みる際は事前の画像検査により異物の大きさ,局在,周辺臓器損傷の有無を把握する必要がある。
  • 岩佐 陽一郎, 鬼頭 良輔, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌における化学放射線療法(CRT)の晩期障害が近年明らかとなっているが,放射線性壊死は頻度が低いことや治療抵抗性であることから対応に難渋することも経験される。今回われわれは中咽頭癌に対するCRT後に咽頭粘膜壊死をきたした稀な1例を経験したため報告する。
    症例は48歳男性。p16陽性中咽頭癌(T1N1M0)に対してCRTを施行した。治療後に咽頭粘膜壊死をきたし,CRT後6か月に入院にて放射線性喉頭壊死に準じた集学的な治療を行い治癒に至った。
    咽頭粘膜壊死は稀な晩期障害ではあるが,重篤な合併症回避のためにも適切な治療対応が必要な疾患として十分に認識すべきであると考えられた。
  • 井上 綾佳, 谷垣 裕二, 森下 大樹, 中川 千尋, 折舘 伸彦
    2022 年 31 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    成人後,頭部外傷を契機に反復するようになった髄膜炎を精査し,内耳奇形が助長因子と考えられた1例を経験したので報告する。症例は68歳男性で,左先天性難聴の既往があった。4年前の頭部外傷後より髄膜炎を反復するようになり,持続する左水様性鼻漏より髄液漏が疑われた。鼻腔ファイバースコピーでは耳管咽頭口より無色漿液性液体の流出を認め,髄液鼻漏と考えられた。側頭骨CT検査では左蝸牛・半規管の形成不全を認め,Mondini型内耳奇形を認めた。髄液持続ドレナージ下に中耳充填・内耳窓閉鎖術を行い髄液漏を停止させ,髄膜炎の発症を抑えることができた。反復性髄膜炎の鑑別診断には内耳奇形の検索を行う必要があると考えられた。
  • 松本 尚之, 中屋 宗雄, 野内 舞, 木田 渉, 稲吉 康比呂
    2021 年 31 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    今回,保存的治療に抵抗性の,巨大甲状腺腫を伴う破壊性甲状腺炎に対し,外科的治療で改善を得たので報告する。症例は56歳男性,急性心不全の診断で前医に入院した。心不全の原因精査で甲状腺中毒症の関与が疑われ,精査目的で当院内分泌内科を受診した。精査の結果,巨大甲状腺腫を伴った破壊性甲状腺炎が疑われた。症状が出現してから3か月以上経過するも甲状腺中毒症は改善せず手術目的で当科紹介受診し,甲状腺全摘術を施行した。術後,甲状腺ホルモン値は安定し,甲状腺中毒症の症状も消失した。破壊性甲状腺炎は通常3か月以内に自然軽快するが,保存的治療に抵抗性の甲状腺中毒症に対しては外科的治療も考慮すべきと考えられた。
  • 矢間 敬章, 國本 泰臣, 黒崎 雅道, 八木 俊路朗, 渡部 佑, 藤原 和典
    2021 年 31 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    外耳道癌は一塊に摘出できると予後が良く,腫瘍進展度に応じて定型的に術式選択されることが多い。一方,画一的な術式決定は余剰な副損傷を生じる問題がある。今回報告する左外耳道癌症例の進展度はT3であったが,腫瘍は外耳道内から一部上鼓室側壁方向に進展するのみであった。そのため外側側頭骨切除術に加え,ツチ骨頭より外側の上鼓室を一塊に摘出することにより根治切除が可能と判断した。術中切除境界をナビゲーションで確認しながら病変を一塊に摘出し,術後約4年間再発を認めていない。画像診断の進歩に伴い切除境界の検討が的確となり,ナビゲーションの併用で従来の画一的な術式によらない切除が実現し得るようになったと考えた。
  • 松本 淳也, 牧原 靖一郎, 大村 和弘, 内藤 智之, 土井 彰, 假谷 伸, 安藤 瑞生
    2021 年 31 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    巨大な鼻腔血管腫の手術では良好な視野の確保が困難となることが多く,また術中に大量出血をきたすことがあるため,術式の選択が重要とされる。本症例は,78歳女性,左鼻腔を充満する血管腫症例である。術前塞栓術を試みたが施行できなかったため,手術の最初に栄養血管である蝶口蓋動脈の処理が必要であった。TACMI法とEndoscopic Denker’s Approachを併用することで,蝶口蓋動脈凝固切断後の腫瘍の一塊切除が,内視鏡下に可能となった。これらの術式の併用は,巨大な鼻腔腫瘍,特に蝶口蓋動脈の処理も必要な場面において有用であると考えられた。
  • 秋定 直樹, 牧野 琢丸, 森本 光作, 佐藤 明日香, 駿河 有莉, 梶原 壮平, 浦口 健介, 大道 亮太郎, 安藤 瑞生
    2021 年 31 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/25
    [早期公開] 公開日: 2021/12/18
    ジャーナル フリー
    胆道感染症は,胆石や胆泥により胆汁が鬱滞することで十二指腸乳頭より上行性に細菌感染が生じ発症する。長期間の絶食や経口摂取量不足が続くと胆汁がよどみ,胆石や胆泥発生の好条件となる。また,オピオイド鎮痛薬によるオッジ括約筋機能不全に陥る場合もあり,化学放射線療法中の腹部症状には注意を要する。今回われわれは外耳道癌に対するセツキシマブ併用放射線療法中に発症した胆道感染症を経験した。胆道感染症は診断と治療が遅れれば,開腹手術を要することがある。化学放射線療法を行う機会のある耳鼻咽喉科医は留意すべき治療中合併症のひとつであろう。
feedback
Top