抄録
分泌癌(Secretory Carcinoma:SC)は近年,疾患概念が確立された低悪性度唾液腺癌で,以前は乳腺相似分泌癌と呼ばれていた。今回は4例(耳下腺3例,顎下腺1例)の分泌癌について診断過程や経過を報告する。細胞診標本の細胞転写法による免疫染色で術前に分泌癌と推定できた症例が1例あった。全症例で手術を施行し,切除断端近接の2症例では術後照射を追加した。免疫染色で診断した症例が1例,ETV6-NTRK3融合遺伝子を同定して確定診断とした症例が3例あった。分泌癌に特異的とされるPan-Trk抗体による免疫染色は全症例で陽性であった。再発や転移なく全症例が良好に経過している。