2024 年 33 巻 3 号 p. 359-364
アブミ骨固着の多くは底板固着を呈するが,稀に上部構造での固着がみられることもある。両側アブミ骨上部構造固着により伝音難聴を呈した1例を経験したので報告する。症例は25歳女性。純音聴力検査で両側とも低音部でより気骨導差の大きい伝音難聴を呈した。高分解能中内耳CTで両側ともアブミ骨上部構造と錐体隆起との間に骨性構造がみられた。右鼓室形成術を施行し,右耳術後4か月で左鼓室形成術を施行した。左右ともアブミ骨筋と並行して骨架橋構造がアブミ骨上部構造と錐体隆起の間に見られ,この架橋構造を離断するとアブミ骨の可動性は改善した。高分解能CTは固着部位の推定に有用であった。