頭頸部外科
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最新号
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教育セミナー1
  • 高橋 邦行
    2024 年 33 巻 3 号 p. 271-275
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    鼓室形成術の基本は外耳道後壁保存型鼓室形成術であり,そのポイントを知ることで安全な手術が可能でなる。乳突削開術で最初に削開を始める部位としてMacEwen’s triangleがあるが,三角形の意識が強いまま上鼓室を開放すると,うまく開放できない。耳小骨,顔面神経,外側半規管は外耳道壁より5mm以内にあるため,外耳道壁をできるだけ薄くし,ハート型を意識した乳突削開,上鼓室開放を行う。S状静脈洞,脳硬膜などは外側面から骨を透かして見える程度まで積極的に見るPositive identificationを行うと,安全な削開が可能である。後鼓室開放術では外耳道壁を薄くする延長で縦方向に開放し,個人の乳突腔の形状を考え,外耳道壁の高さを少し調整すると安全な開放が可能である。
教育セミナー15
  • 橋本 香里, 古川 まどか, 木谷 有加, 吉田 真夏
    2024 年 33 巻 3 号 p. 277-280
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    舌部分切除術は,早期舌癌だけでなく良性腫瘍に対しても行われる手術手技であるが,舌癌においては安全域をつけた確実な切除が重要である。またリンパ節,とくに舌リンパ節への転移の有無はその後の予後に関与するとも言われており注意を払う必要性がある。今回,舌切除に関連する舌とその周囲の解剖を舌リンパ節含めて述べるとともに,当科で行っている半導体レーザーを使用した実際の舌切除方法につき述べる。
シンポジウム2
鼻科学の挑戦:経鼻内視鏡下頭蓋底悪性腫瘍手術 —合併症の回避と対応—
  • 田中 秀峰
    2024 年 33 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    髄液漏は,前頭蓋底切除を行うと必ず起こり,切除後の頭蓋底再建ができるかは重要である。経鼻内視鏡下前頭蓋底悪性腫瘍手術では,前頭洞から蝶形骨洞までの広範囲な切除と再建が必要である。術後髄液漏を減らすため多層再建を行うことが勧められ,硬膜層と鼻粘膜上皮層の再建を行う。それでも,術後髄液漏の頻度は0%にはならず,周術期だけでなく,治療後の遅発性髄液漏もあり苦労する。髄液漏は確実に止める必要があり,その程度や範囲,状況は様々である。経鼻内視鏡下前頭蓋底悪性腫瘍手術において,その状況に応じた閉鎖手技は必須である。
シンポジウム5
耳科学側頭骨外科の挑戦
  • 伊藤 卓, 本田 圭司, 堤 剛
    2024 年 33 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    画像処理および解析機能の向上によって,種々の三次元画像に基づく手術支援技術が開発されてきた。耳鼻咽喉科領域,特に側頭骨・頭蓋底外科はほとんどの重要臓器が硬組織内で固定されて移動や変形をしないため,これら手術支援技術の良い適応と考えられる。本稿ではまずはO-arm Navigation Systemの耳科領域における活用例について述べる。次に現在耳科領域においてはあまり臨床応用されていないTemplate Guided Surgeryの可能性について解説し,さらにExtended Reality:XR技術を活用したHologram Assisted Surgeryについても紹介する。
  • 伊藤 吏
    2024 年 33 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    従来の側頭骨手術は顕微鏡下の骨削開を基本として行われてきたが,死角部位の盲目的操作を補完し,さらには低侵襲化を目指して,内視鏡補助下顕微鏡手術やTEESが開発された。当科では,術前MRIで推定された真珠腫進展範囲に合わせて術式を選択する「個別化医療」を行っており,進展が乳突洞までであればTEESで,乳突蜂巣進展例では鼓室は広角な視野を活かしたTEESで対応し,乳突部は外視鏡下の外耳道後壁保存型乳突削開術で対応している。真珠腫に対する内視鏡・外視鏡によるHeads-up surgeryは,人間工学的利点や教育的優位性に加え,顕微鏡の死角部位も内視鏡による直視下操作を可能とする優れた術式である。
原著
  • 東 明紗, 若杉 哲郎, 長谷川 翔一, 髙橋 梓, 竹内 頌子, 大久保 淳一
    2024 年 33 巻 3 号 p. 301-309
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    プラチナ製剤感受性の再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対して,ペムブロリズマブ単剤(P),もしくは化学療法の併用(P+C)による一次治療を行った24症例を後方視的に検討した。無増悪生存期間は両群ともに2.1か月,全生存期間はP群が7.0か月,P+C群は10.0か月であった。奏効率は,Pの18.8%に対しP+Cは50.0%と高かった。Log-rang検定で,PS 2の予後が不良で,PでのPS 2のOSは4.7か月とPS 0/1と比較して有意に不良であった(p=0.002)。PではPS 2の予後は不良であり,その適応は慎重に選択する必要がある。一方,P+Cでは縮小を要する症例での奏効が期待できる。
  • 山口 慎人, 的場 拓磨, 川北 大介, 髙野 学, 村嶋 明大, 蓑原 潔, 岩城 翔, 柘植 博之, 岩﨑 真一
    2024 年 33 巻 3 号 p. 311-317
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,乳頭癌高リスク症例に全摘術を行うことが推奨されているが,中リスク症例は症例ごとの判断となっており,術式選択に難渋することがある。今回われわれは,2012年7月~2022年7月に名古屋市立大学病院で施行した甲状腺乳頭癌全摘症例72例に対して臨床的検討を行った。高リスク症例が最も多く,中リスク症例では外側区域リンパ節転移がある症例が多かった。高リスク症例では無増悪生存率が不良であり,中リスク症例であっても,外側区域リンパ節転移のある症例では再発・転移リスクが高いことから,合併症の予防に努めつつ全摘術を考慮すべきと考えられる。
  • 松本 吉史, 小村 豪, 江口 紘太郎, 坂井 梓, 坂井 利彦, 渡邉 嶺, 三輪 好, 相原 勇介, 林 崇明, 森 泰昌, 吉本 世一
    2024 年 33 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域原発未分化多形肉腫(UPS)は,全頭頸部腫瘍のうち1%未満の稀な組織型を示し,予後不良な悪性腫瘍である。2013-2021年に当科で外科切除を行った症例を後方視的に検討した。全8例を対象とした。4例は無病生存,4例は原病死した。原病死4例のうち,最終観察時に2例は局所再発と遠隔転移,2例は遠隔転移のみを認めた。2年粗生存率は45%,局所制御率は75%であった。切除可能であれば,外科切除がUPSに対する根治治療となり得る。断端陽性でも術後放射線療法は十分な照射線量が確保できれば,局所制御に寄与する可能性がある。遠隔転移に対する薬物療法の開発が今後の課題であると考えられた。
  • 柴田 敏章
    2024 年 33 巻 3 号 p. 325-329
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    中耳手術において一旦は改善した聴力が再増悪する症例は時折発生する。特に小児においては幼少期に手術を行い,以後成長と共に聴力悪化をきたしてしまうケースを散見する。今回当施設で初回手術を行い,2013年〜2022年の間に再手術を行った12例を検討した。年齢は11〜70歳,術式は9例をTEESで行った。聴力悪化が起こった際には耳小骨の固着や転位,鼓室肉芽など様々な原因を考えるが,実際に再手術を行った際の鼓室内および耳小骨の病態につき小児と成人に分けて検討を行った。TEESで行うことで,より伝音難聴の病態が把握しやすくなり,低侵襲なため患者側も再手術に対し,積極的に考えることが可能となった。
  • 中谷 宏章, 竹内 薫, 福島 慶
    2024 年 33 巻 3 号 p. 331-340
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    当科では2018年よりワルチン腫瘍例に対し被膜外摘出術を行っており,その治療結果を報告する。対象はワルチン腫瘍新鮮例9例,11個で,4個は深葉腫瘍であった。全例顔面神経モニタリング下に手術を行った。耳下腺浅葉剥離後に腫瘍被膜全周に少量の耳下腺組織を付けて摘出する手術を予定したが,腫瘍の耳下腺外露出や顔面神経との接触により部分的に耳下腺組織を付ける症例が多かった。深葉腫瘍例は全例が被膜外核出術となった。過去の報告よりも大きな腫瘍や深葉腫瘍を対象としたため短時間の手術にはならなかったが,合併症のない手術が行えた。術中顔面神経モニタリングを用いれば被膜外摘出術の適応が拡がると考えられた。
  • 松本 浩平, 吉田 晴郎, 田中 藤信, 熊井 良彦
    2024 年 33 巻 3 号 p. 341-346
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    顎下腺移行部唾石に対しては,一般に顎下腺摘出術が行われていたが,近年ではより低侵襲な手術が行われつつある。今回,顎下腺移行部唾石8症例に対し,鼻用硬性内視鏡で観察しながら口内法での唾石摘出を行い,その有用性を評価し肉眼的な口内法や顎下腺摘出術と比較した。本法では,肉眼での観察では死角となる口腔底深部を詳細に描出でき,良好な術野を術者と助手が共有できる利点があり,唾石や舌神経などの周囲組織の観察を複数の術者が同時に行えるため,手術時間の短縮,合併症の軽減,教育面でも有効であると考えられた。唾液腺管内視鏡を有さない施設においては,行う価値がある有用な手術方法と考えられた。
  • 太田 一郎, 西川 大祐, 秋岡 宏志, 大平 乃理子, 家根 旦有
    2024 年 33 巻 3 号 p. 347-352
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    高齢頭頸部がん患者に対してG8を用いて高齢者機能を評価し予後等について調査を行うことで簡易スクリーニングツールとしてのG8の有用性について検討した。2018年1月から2019年12月までの2年間に当科を一次治療で受診した70歳以上の頭頸部がん患者37名に対して,G8値と生命予後との関連から算出したG8値のカットオフ値が10.5となった。G8値<11を高齢者機能低下群として全生存率を解析したところ,3年全生存率はG8値≧11群:88.0%,G8値<11群:35.3%となり,2群間で有意差を認めた。これらの結果から高齢頭頸部がん患者においてG8の予後指標としての有用性が示唆された。
症例
  • 寺田 夕希, 竹田 大樹, 折田 頼尚
    2024 年 33 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    当科において2019~2021年の間に,気管浸潤を伴う甲状腺癌に対して気管端々吻合を施行した4例について検討を加え報告する。患者年齢は67~86歳,男性1名・女性3名であった。4例中2例は術中に予防的に気管切開を施行し,1例は術後の喉頭浮腫のために緊急気管切開を行った。適応を誤らなければ,気管端々吻合は甲状腺癌気管浸潤症例に対して比較的患者への負担の少ない考慮すべき術式と考えられ,吻合部から十分離れた位置に小さな気管切開を置くことによって術後の安定した経過を得ることができると考えられた。
  • 武田 浩暉, 鎌倉 武史, 太田 有美, 真貝 佳代子, 佐藤 崇, 大薗 芳之, 今井 貴夫, 猪原 秀典
    2024 年 33 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    アブミ骨固着の多くは底板固着を呈するが,稀に上部構造での固着がみられることもある。両側アブミ骨上部構造固着により伝音難聴を呈した1例を経験したので報告する。症例は25歳女性。純音聴力検査で両側とも低音部でより気骨導差の大きい伝音難聴を呈した。高分解能中内耳CTで両側ともアブミ骨上部構造と錐体隆起との間に骨性構造がみられた。右鼓室形成術を施行し,右耳術後4か月で左鼓室形成術を施行した。左右ともアブミ骨筋と並行して骨架橋構造がアブミ骨上部構造と錐体隆起の間に見られ,この架橋構造を離断するとアブミ骨の可動性は改善した。高分解能CTは固着部位の推定に有用であった。
  • 坂本 めい, 廣瀬 敬信, 竹本 洋介, 竹本 剛, 折田 浩志, 山下 裕司
    2024 年 33 巻 3 号 p. 365-373
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    アポクリン癌はアポクリン腺より発生する稀な腫瘍である。その多くは腋窩に発生するとされ,眼瞼より発生するアポクリン癌は非常に稀である。今回われわれは,右下眼瞼より発生したアポクリン癌の症例を経験した。症例は70代男性,鼻涙管進展の可能性がある右下眼瞼原発のアポクリン癌に対し,右眼窩内容全摘出術+上顎部分切除術を施行した。
    アポクリン癌の治療については原発巣の切除が基本とされることが多く,放射線治療や化学療法の有用性について統一的な見解は確立されていない。予後は比較的良好な癌とされているが,中には悪性度の高い症例が存在する可能性が示唆され,慎重な経過観察が必要と考えた。
  • 古井 萌子, 的場 拓磨, 佐藤 豊大, 川北 大介, 村嶋 明大, 蓑原 潔, 中井 一之, 岩城 翔, 柘植 博之, 金屋 歳三, 岩﨑 ...
    2024 年 33 巻 3 号 p. 375-378
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    Eagle症候群とは,茎状突起の過長に起因して多彩な症状を来す疾患である。典型例では,下位脳神経の圧迫や絞扼により咽頭痛・嚥下障害・顔面痛・頸部痛などが生じるが,稀に内頸動脈の圧迫・解離により一過性脳虚血発作や脳梗塞を呈する例もある。今回,われわれは反復する脳梗塞の原因がEagle症候群であった症例を経験した。過長した茎状突起が頸動脈を圧迫することで脳梗塞を発症しており,茎状突起切断術が治療に有効であった。術後1年経った現時点で,再発は認めていない。
  • 上斗米 愛実, 岡 愛子, 金井 健吾, 渡部 佳弘, 北村 寛志, 岡野 光博, 野口 佳弘, 松岡 亮介, 河合 弘二, 今西 順久
    2024 年 33 巻 3 号 p. 379-385
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    頸部領域のリンパ節に遠隔臓器の癌が転移することは稀であるが,泌尿器領域の癌はその中で一定の割合を占めている。しかしながら膀胱尿路上皮癌の頸部リンパ節への転移は非常に稀である。今回われわれは,stage Ⅳ膀胱尿路上皮癌に対し化学療法により一旦完全奏効となったが,その5年後にPET-CTにて左鎖骨上窩リンパ節への単発の転移が示唆された症例を経験した。選択的頸部郭清術を行い,CK7,CK20およびGATA3の免疫組織化学染色により膀胱癌からの転移と確定診断された。本例では救済頸部郭清術を行い得たが,類似例の報告実績がないためその長期生存に与える意義は不明であり,継続した経過観察が不可欠と考えられる。
  • 西田 健祐, 木村 有佐, 辻川 敬裕, 森本 寛基, 佐分利 純代, 椋代 茂之, 永尾 光, 長澤 慎介, 平野 滋
    2024 年 33 巻 3 号 p. 387-391
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は9歳男児,頸部正中の腫瘤および咽頭痛を自覚し当院を紹介受診した。左声帯麻痺を認め,甲状腺乳頭癌(cT4aN1bM1)の診断を得て,甲状腺全摘術,D3c郭清,気管切開術を施行した。術中に左反回神経への腫瘍浸潤を認め,反回神経を切断し,13mmの欠損長に対して神経再生誘導チューブを用いて再建した。術後の音声機能は良好であり,術後放射性ヨウ素内用療法により肺転移は著明に縮小し,良好な経過を得ている。小児甲状腺癌の頻度は少ないが,診断時の進行例が多く,成人進行例と同様に反回神経再建を要する症例も存在する。小児への神経再生誘導チューブの使用経験と経過について報告する。
  • 亀田 茜, 米田 理葉, 栗田 惇也, 福本 一郎, 新井 智之, 木下 崇, 鈴木 猛司, 花澤 豊行
    2024 年 33 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌に対する化学放射線療法は広く行われている治療であるが,稀に合併症として仮性動脈瘤が形成されることがあり,破裂すると致死的な転機をとる。下咽頭癌の化学放射線療法後に総頸動脈の仮性動脈瘤破裂を生じた3症例を経験した。全例で総頸動脈の温存はできず,2例は脳梗塞を発症し寝たきりとなった。1例は初期治療として血管内治療を行い,その後喉頭壊死の治療と再出血予防のため遊離空腸再建を用いた咽頭喉頭食道摘出術と総頸動脈の合併切除を施行した。事前に脳梗塞リスク評価を行い,脳梗塞を発症することなく独歩で退院した。治療は初期止血だけでなく,再出血予防と脳梗塞のリスクを考慮することが重要である。
  • 佐藤 瞭, 川崎 朋範, 松村 聡子, 井上 準, 蝦原 康宏, 中平 光彦, 山崎 知子
    2024 年 33 巻 3 号 p. 401-406
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル フリー
    唾液腺分泌がんは2017年改定の新WHO分類に収載された唾液腺悪性腫瘍である。今回,胸膜転移による癌性胸水を伴う耳下腺分泌がんの症例を経験した。根治手術の適応はなかったが,生検検体からETV6-NTRK3融合遺伝子が検出され,トロポミオシン受容体キナーゼ阻害薬であるラロトレクチニブ投与を開始した。これに伴い,腫瘍の縮小,癌性胸水の減少,自覚症状の改善を認めた。投薬は継続され,病勢の悪化なく経過している。ラロトレクチニブは本邦では2021年3月に製造販売が承認され,国内における使用報告は本稿作成時点で1篇のみである。本症例では,投薬開始より速やかに奏効した貴重な使用報告になりうると考えられた。
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