頭頸部外科
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上顎悪性腫瘍治療後の咀嚼・構音機能について
石田 春彦斎藤 充藤島 禎弘武木田 誠一天津 睦郎
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2000 年 10 巻 3 号 p. 171-178

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抄録

 上顎悪性腫瘍患者の術後の咀嚼・構音機能について検討した。対象症例は21例で,そのうち10例は上顎全摘または拡大上顎全摘を施行した後,再建は行わず空洞性に治癒させた(空洞性治癒群)。また3例は腫瘍の一塊切除の後遊離腹直筋皮弁で上顎部を充填した(充填群)。8例は三者併用療法を行った(三者併用群)。アンケート調査による咀嚼・構音に関する調査を行い,さらに咀嚼機能については低粘着性発色ガムで咀嚼力を測定し,また構音機能に対しては日本語100音による発語明瞭度を測定した。その結果咀嚼機能に関しては3群ともほぼ普通食が摂取可能であったが,空洞性治癒群では他の2群に比べ食餌の鼻腔への逆流を認める症例が多かった。咀嚼力は空洞性治癒群,三者併用群では充填群および健常者に比べ低値であった。構音機能についてはアンケートの結果では3群とも会話にはほとんど支障を来していなかったが,発語明瞭度は充填群が良好で,三者併用群,空洞性治癒群の順であった。空洞性治癒群には術後咀嚼,構音機能に障害を残しているが,自覚的評価の結果は比較的良好であり,当科では今後も一塊切除の後空洞性に治癒させる方針である。

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