頭頸部外科
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10 巻, 3 号
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  • 辻 裕之, 南 豊彦, 立川 拓也, 小椋 学, 川村 繁樹, 山下 敏夫, 川上 勝弘, 久徳 茂雄
    2000 年 10 巻 3 号 p. 145-148
    発行日: 2000/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     前頭蓋底切除後の頭蓋底再建において,頭蓋骨膜弁や遊離腹直筋皮弁による軟性再建は必須であるが,硬性再建が必要か否かは以前より議論の対象になってきた。その原因として遊離骨による再建は血行が不十分なため移植骨が縮小,あるいは感染・腐骨化を惹起させる点である。そのため,われわれは1986年よりおこなった前頭蓋底手術12例に対しては全例頭蓋骨膜弁による軟性再建のみを施行してきた。しかし,より安全で確実な頭蓋底再建を目指すためには硬性再建を行う方が理想的であると考えている。今回,頭蓋底欠損部の硬性再建として前方および側方を茎とした頭蓋骨膜に前頭骨外板を付けた有茎骨弁により前頭蓋底再建をおこない良好な結果を得たのでその術式について報告する。
  • 山田 弘之, 藤田 健一郎, 石田 良治
    2000 年 10 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2000/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     山田赤十字病院耳鼻咽喉科において経験した気管孔再発3例を報告した。全例とも声門癌であり,放射線治療後に喉頭摘出が行われていた。3例中1例は腫瘍減量手術後に残存腫瘍に対して術後照射を施行した。この症例は術後2年6ヵ月非担癌生存中である。また,1例は再発腫瘍の切除後,欠損した気管壁をDP皮弁で再建したが,術後5ヵ月非担癌生存中である。気管孔再発は予後が非常に不良で救済手術は避けられる傾向にあるが,時には積極的な手術が予後を良好にすることもある。気管孔再発防止のためには気管傍郭清が必須であると考える。
  • 鳥山 満由, 毛利 光宏, 天津 睦郎
    2000 年 10 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2000/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     我が国においては,遭遇することがまれである銃創症例を経験したので報告した。症例は31歳の男性。顔面を拳銃で撃たれ,約25分後当院救急部へ搬入された。左耳下部皮膚に射入口を認め,顔面単純X線及び頸部CTで,左下顎骨骨折と,右顎下部皮下に銃弾が停留している所見が認められた。顔面から頸部にかけての盲管銃創と診断し,同日緊急手術を施行した。銃弾を摘出し,血腫の除去,挫滅汚染組織のdebridementを行った。この症例では,下顎骨を貫通した時点で銃弾のエネルギーの大半が消費されたために,頸部の血管系に大きな損傷を与えることなく対側の皮下へ到達したものと考えられた。
  • ―側頭骨高分解能CT撮影による評価―
    前野 博昭, 牧野 邦彦, 毛利 光宏, 斉藤 幹, 武木田 誠一, 天津 睦郎
    2000 年 10 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 2000/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     慢性穿孔性中耳炎12耳に対して,側頭骨高分解能CTを撮影し,デジタル画像処理の技術を使用して,鼓膜形成術前後の中耳含気腔の容積を比較した。その結果,術前後の全中耳,鼓室部,乳突部の含気腔容積の各々の術前後で対応のある2群のt検定を行い,すべて統計学的に有意差を認めた(P<0.05)。しかし,術前上鼓室に含気のない5耳では,すべて術後も乳突部に含気化を認めなかった。中耳含気腔容積が増加した要因として,鼓膜の閉鎖により中耳粘膜が正常化すること,経耳管的換気と経粘膜的換気が機能することをあげた。一方で術前上鼓室に含気のない症例では,上鼓室内が器質化して換気経路を閉塞していると考えた。
  • 石田 春彦, 斎藤 充, 藤島 禎弘, 武木田 誠一, 天津 睦郎
    2000 年 10 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 2000/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     上顎悪性腫瘍患者の術後の咀嚼・構音機能について検討した。対象症例は21例で,そのうち10例は上顎全摘または拡大上顎全摘を施行した後,再建は行わず空洞性に治癒させた(空洞性治癒群)。また3例は腫瘍の一塊切除の後遊離腹直筋皮弁で上顎部を充填した(充填群)。8例は三者併用療法を行った(三者併用群)。アンケート調査による咀嚼・構音に関する調査を行い,さらに咀嚼機能については低粘着性発色ガムで咀嚼力を測定し,また構音機能に対しては日本語100音による発語明瞭度を測定した。その結果咀嚼機能に関しては3群ともほぼ普通食が摂取可能であったが,空洞性治癒群では他の2群に比べ食餌の鼻腔への逆流を認める症例が多かった。咀嚼力は空洞性治癒群,三者併用群では充填群および健常者に比べ低値であった。構音機能についてはアンケートの結果では3群とも会話にはほとんど支障を来していなかったが,発語明瞭度は充填群が良好で,三者併用群,空洞性治癒群の順であった。空洞性治癒群には術後咀嚼,構音機能に障害を残しているが,自覚的評価の結果は比較的良好であり,当科では今後も一塊切除の後空洞性に治癒させる方針である。
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