抄録
早期の嗅神経芽細胞腫に対する治療として,ナビゲーションシステム下に前頭蓋底手術を施行した1例について報告する。症例は左の鼻閉を主訴とした38歳の男性であり,前医にて鼻茸切除術が施行された。しかし,術中の著明な出血所見から腫瘍と判断され,病理検査にて嗅神経芽細胞腫と診断された。当科初診時,腫瘍は左鼻腔から上咽頭にかけて存在し,頭蓋底骨は一部吸収されていたが明らかな頭蓋内・眼窩内進展はなくKadishBタイプあるいはTINOMOに分類された。本症例に対し,ナビゲーションシステム支援下に前頭蓋底手術を行ったことにより,腫瘍の存在範囲や周囲組織との関係を正確に把握でき,安全で根治的な摘出が可能であった。