抄録
当教室では,頸動脈浸潤を伴う頭頸部扁平上皮癌症例において頸動脈切除を安全に遂行するため,術前に側副血行不良であることが判明した症例に対して,対側外頸―中大脳動脈バイパス術を施行している。本バイパス術は患側頸部の術野を全く通過しないため,頸部手術の根治性を損なうことがなく,術後感染による再建血管の破綻の懸念がないことを特長とする。バイパス術施行症例の術後の血行動態の観察より,本バイパスは長期的に安定して,大量の血流を患側大脳皮質領域に供給することが示された。この間に,本来の側副血行路も徐々に発達する事も示され,血行再建術として安全性が高いと考えられた。