頭頸部外科
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4 巻, 2 号
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  • ―術式と循環動態の長期的評価を中心に―
    沼田 勉, 今野 昭義, 鈴木 晴彦, 竹内 洋介, 金子 敏郎
    1994 年4 巻2 号 p. 101-107
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当教室では,頸動脈浸潤を伴う頭頸部扁平上皮癌症例において頸動脈切除を安全に遂行するため,術前に側副血行不良であることが判明した症例に対して,対側外頸―中大脳動脈バイパス術を施行している。本バイパス術は患側頸部の術野を全く通過しないため,頸部手術の根治性を損なうことがなく,術後感染による再建血管の破綻の懸念がないことを特長とする。バイパス術施行症例の術後の血行動態の観察より,本バイパスは長期的に安定して,大量の血流を患側大脳皮質領域に供給することが示された。この間に,本来の側副血行路も徐々に発達する事も示され,血行再建術として安全性が高いと考えられた。
  • 安田 範夫, 村上 泰
    1994 年4 巻2 号 p. 109-115
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     大胸筋皮弁を採取する際の手術手技の実際と留意点について述べた。切開皮膚のundermineは十分にとり,大胸筋全体を挙上する方が軸血管を温存しやすく出血も少ない。特に軸血管周囲の手術操作は電気メスを使わず丁寧に行う。またピボットポイントにあたる鎖骨の軟組織は十分除去し,血管柄が翻転する鎖骨部は決して圧迫しないよう術中術後を通じて注意しなければならない。大胸筋皮弁は筋体裏面の栄養軸血管の走行のvariationtも少なく,ここに述べた手順で行えば安全に筋皮弁採取が可能である。
  • ―その基本手技とこつ―
    鎌田 信悦, 川端 一嘉, 高橋 久昭
    1994 年4 巻2 号 p. 117-122
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     前頭洞原発扁平上皮癌に対する前頭蓋底合併切除術を紹介した。頭蓋内と顔面切開によるアプローチでen-bloc摘出をおこなった。遊離腹直筋皮弁で頭蓋底を再建した。頭蓋内の手術操作は頭頸部外科手技と質的に異なる部分があり,その注意点を述べた。頭蓋内組織はきわめて脆弱であり,圧迫,牽引はしてはならず,手術操作は"gentle and slow"でなければならない。また遊離筋皮弁などで,鼻腔と頭蓋内を完全に遮断すれば術後感染は防止できる。これらの基本をまもれば,前頭蓋底手術の安全性が確保されることを述べた。
  • 中野 富夫, 安 宗超
    1994 年4 巻2 号 p. 123-127
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     下垂体腺腫(Pituitary Adenoma)に対する治療法は,a.手術療法として経前頭開頭術(Transfrontal)により下垂体腺腫の摘出をする法。鼻または口腔内より蝶形骨洞を経てトルコ鞍に達する経蝶形骨洞法(Transsphenoidal)などが知られている。b.放射線療法としては外部からの多量の放射線治療がある。そのほかに近頃ではトルコ鞍内に主としてβ線を出すisotopeを挿入し腫瘍内部に照射する方法が試みられてきている。しかし未だ充分な遠隔成績が得られていない。われわれは開頭術後に再発した症例に鼻蝶形骨洞よりトルコ鞍内の嚢腫を穿刺して32P isotopeを注入した。遠隔成績十年後の現在も経過良好な無再発現象の症例を経験したので報告する。
  • 高木 正, 田原 真也, 雲井 一夫, 木西 實, 天津 睦郎
    1994 年4 巻2 号 p. 129-131
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     遊離空腸移植術は下咽頭・頸部食道の再建において近年では最もよく用いられる術式の一つである。今回,遅発性血栓による血流障害により,移植遊離空腸の広域狭窄をおこしたと考えられる症例を経験したので報告する。
  • 望月 高行, 岡本 牧人, 佐野 肇, 長沼 英明, 設楽 哲也
    1994 年4 巻2 号 p. 133-140
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を施行した閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者および,いびき患者の術前,術後の中咽頭の計測を行ない解剖学的形態および手術の効果について検討した。 口蓋垂幅は閉塞性睡眠時無呼吸症候群がいびき群に比べ長く,口蓋垂長はいびき群のほうがむしろ長かった。日本人無呼吸患者は米国人無呼吸患者といびき群の中間に位置する計測値であった。手術有効群は無効群に比べ,口蓋垂幅が有意に広かった。手術の目的である中咽頭拡大は有効群および無効群ともに達成されていた。無効群は口蓋垂軟口蓋咽頭形成術にプラスアルファが必要な症例が多かった。睡眠時呼吸障害指数のみでは手術の有効性の評価の判定は不十分であると思われた。
  • ―術中神経刺激兼用手術器具(探針および鋏)の開発―
    神崎 仁, 井上 泰宏, 大内 利昭, 小形 章, 佐藤 靖夫, 吉原 重光, 塩原 隆造, 戸谷 重雄
    1994 年4 巻2 号 p. 141-146
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     近年我々は顔面神経保存のために,針筋電図を用いる術中顔面神経モニタリングに加えて,神経刺激兼用の探針および鋏を開発した。これらを用いることにより顔面神経保存の手技は容易になり,かつ手術時間は短縮した。腫瘍の大きさと術後顔面神経機能との関係については,本器具を用いてからの症例の術後経過観察期間が短いので,今後検討する予定である。しかし,本器具を用いてから,やむをえず顔面神経が犠牲にされても頭蓋内吻合が可能な症例が大部分となり,我々の施設における舌下神経一顔面神経吻合術は減少した。本報告では,著者らの行っている顔面神経保存の手技を述べ,術中モニタリングの有用性に関して最近の文献をもとに考察を行った。
  • 益田 宗幸, 熊本 芳彦, 鳥谷 陽一, 福島 淳一, 小宮山 荘太郎
    1994 年4 巻2 号 p. 147-151
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     軟口蓋全摘出症例に対し,硬口蓋粘骨膜弁に上茎・下茎両方の咽頭粘膜弁を組合せた軟口蓋再建法を試み,良好な結果を得た。本法による軟口蓋再建は,対象となる症例が口蓋弓を含む,軟口蓋全層切除症例に限られるが,前額皮弁,DP皮弁,遊離皮弁などの各種皮弁による再建法に比較して,以下の様な利点を持っ優れた方法であると考えられる。(1)手技的に容易であり短時間に行え,侵襲が少ない。(2)術後早期から経口摂取が可能となるなど,術後管理が容易である。(3)嚥下・構音機能にも日常生活上,問題を認めておらず,機能的再建が可能である。
  • 岩井 満, 岸本 誠司
    1994 年4 巻2 号 p. 153-157
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頭蓋底に発生する神経鞘腫は比較的稀な疾患であるが,近年様々なアプローチによる摘出が行われており,最近の焦点は如何に術後の機能障害を抑えるかに移りつつある。これには腫瘍の部位,大きさが重要な因子となる。我々は頭蓋底神経鞘腫7例について手術法,術後機能改善治療を検討した。症例は舌下神経鞘腫1例,頚静脈孔神経鞘腫2例,迷走神経鞘腫1例,交感神経鞘腫1例,三叉神経鞘腫1例,頚神経由来の神経鞘腫1例であった。舌下神経鞘腫の1例は再発に対し2回の再手術を行っている。他の6例は初回手術で全摘出できた。舌下神経,頚静脈孔神経鞘腫例では術後顔面神経麻痺,嚥下困難,嗄声が生じ,機能改善手術を行った。
  • 池田 利夫, 森 祐司, 小笠原 寛, 西村 善彦, 雲井 健雄
    1994 年4 巻2 号 p. 159-162
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻中隔後端に発生した軟骨肉腫の切除に際して,Le Fort I型骨切り術が有用であった経験を私達は第3回本学会において報告した。このアプローチは上咽頭のみならず,Skulld base正中部への外科的処置を,安全かつ広い視野で行い得る利点がある。本法を上咽頭癌にも応用して好結果が得られたので,その経験と共にLe Fort I型骨切り術の適応について考案する。
  • 高橋 久昭, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 保喜 克文, 滝沢 康, 中溝 宗永, 苦瓜 知彦, 八木 克憲, 高砂 江佐央, 永橋 立望, ...
    1994 年4 巻2 号 p. 163-168
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     頭頸部癌・中頭蓋底浸潤症例の手術適応については多くの問題点がある。今回,我々は,海綿静脈洞に浸潤した手術症例を中心に,術前のMRI画像と術中所見とを対比した。 海綿静脈洞に接している場合,腫瘍と頭蓋底骨組織との関係および海綿静脈洞硬膜との関係,さらには,海綿静脈洞に浸潤のある場合,腫瘍と脳実質との関係および内頸動脈との関係について,それぞれMRI画像からの分析を行い,腫瘍切除の難易度についての病期分類を行った。
  • 松崎 真樹, 丹生 健一, 菅澤 正, 市村 恵一, 浅井 昌大
    1994 年4 巻2 号 p. 169-174
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     再建を必要とする口腔・中咽頭癌の拡大手術における気管切開の必要性について,当科手術症例をもとに検討を加えた。気管切開非施行群では気管切開施行群に比べて,術後発声までの期間,および術後経口摂取開始までの期間が短くなる傾向を認めた。気管切開を行わない場合の注意点として,手術手技,抜管の時期,抜管までの管理が挙げたが,嚥下性肺炎などの合併症を来した症例は1例もなかった。口腔・中咽頭癌の手術において気管切開の適応を,今一度,慎重に検討すべきであると思われた。
  • 古川 まどか, 古川 政樹, 榎本 浩幸, 青木 文彦, 久保田 彰, 佃 守
    1994 年4 巻2 号 p. 175-181
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1989年6月から1993年12月までに当科で診断,治療を施行した耳下腺腫瘍36例について検討した。良性腫瘍は29例,悪性腫瘍は7例であった。悪性腫瘍7例のうち5例が原発性悪性腫瘍で,2例が転移性腫瘍であった。術前診断のうち超音波ガイド下細針吸引細胞診(FNAC)の正診率は96%,Gaシンチの正診率は62%で,術前の質的診断法としてFNACが有用であった。悪性腫瘍の治療は,手術的に完全に腫瘍を摘出することが重要で,顔面神経を含めた耳下腺拡大全摘術を施行した。術後顔面神経麻痺に対して,顔面神経即時再建術および頬部つりあげ術を行い,良好な術後機能を得た。
  • 大橋 一正, 窪田 哲昭, 松井 和夫, 田中 裕之, 大谷 尚志
    1994 年4 巻2 号 p. 183-187
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     60歳男性の左頸部に発生した悪性神経鞘腫の1例を報告した。本症例は病理組織学的に初めから悪性神経鞘腫として発症したが,再発を繰り返すうちに次第に悪性度が増していったものと考えられた。治療に対して抵抗性であり,昭和59年の初発以来,約10年間にわたり,4度に及ぶ手術を行い,その都度充分摘出できたと思われたが,わずかつつ部位を変えながら再発を繰り返した。術後には放射線療法,化学療法も行ったが,再発をくい止めるまでは至らなかった。
  • 山田 洋一郎, 木田 亮紀, 鴨原 俊太郎, 遠藤 壮平, 酒井 文隆, 中里 秀史, 石山 浩一, 榎本 知恵
    1994 年4 巻2 号 p. 189-193
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     内シャント設置の上で頸動脈小体腫瘍の摘出術を施行した症例を報告した。本例では,内シャント設置前には,出血のため手術操作が困難であった。内シャント設置後には,剥離の際の出血量が激減し容易に腫瘍の全摘出が行えた。この内シャント設置という手技は操作も容易で術中に設置できる利点がある。特別な処置無しには出血に悩まされ長時間を手術に要していた症例には,この簡単な内シャント設置は出血量を減少させ,手術時間を短縮させるのに役立つものと思われる。また今まで頸動脈の合併切除を施行しなければならなかった症例の中にも,内シャント設置で頸動脈を温存できる症例が存在する可能性があると思われた。
  • 橋本 典子, 佐藤 武男, 吉野 邦俊, 藤井 隆, 稲上 憲一, 上村 裕和, 長原 昌萬, 馬谷 克則
    1994 年4 巻2 号 p. 195-200
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1979~93年に当科で経験した35例の頭頸部神経原性腫瘍(聴神経鞘腫を除く)について検討した。男性13例,女性22例,年齢分布は8~71歳(中央値50歳)であった。神経鞘腫23例,神経線維腫6例,副交感神経節腫2例,悪性神経鞘腫2例,嗅神経芽細胞腫2例であった。起源神経の同定症例は12例,術後推定症例は3例であった。治療は全摘出29例,核出術2例,生検のみ1例,放射線1例,術後照射1例,術後化学療法1例であった。再発は頸部,副咽頭の2例に認められた。 良性神経鞘腫の場合,経過観察中増大傾向の認められない症例がほとんどであり,良性神経鞘腫と確認できれば,摘出を施行する必要のない症例もあると考えられる。
  • 田村 嘉之, 堀内 正敏, 坂井 真, 三宅 浩郷
    1994 年4 巻2 号 p. 201-208
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     耳下腺浅葉の良性多形腺腫新鮮例の外科治療法として,再発や合併症の少ない最良の術式を検討した。60例中,最低1年以上経過観察できた54例の術式別内訳は腫瘍核出術20例,耳下腺浅葉部分切除術34例だった。この54例中の再発例は腫瘍核出術で4/20例,部分切除術で0/34例,全体で4/54例(7.4%)だった。60例中,術後顔面神経麻痺を呈したのは8例だった。この内,永久的な麻痺は各術式とも1例つつの2例だった。経過観察できた54例の中でFrey症候群は腫瘍核出術例で2/20例,部分切除術例で5/34例だった。唾液瘻は3例で,すべて部分切除術だった。(結語)耳下腺浅葉部分切除術は再発や合併症が低く,耳下腺良性多形腺腫の最良の術式と考える。
  • 毛利 光宏, 長嶋 達也, 田原 真也, 石田 春彦, 黒田 浩之, 細見 慶和, 天津 睦郎
    1994 年4 巻2 号 p. 209-216
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中耳扁平上皮癌2症例に対し側頭骨摘出術を施行した。第1例は68歳男性で中,後頭蓋窩の硬膜,乳突外面の皮膚,耳管咽頭口をつけて切除し,S状静脈洞,内頚静脈も摘出した。術後3年3ケ月の現在非担癌生存している。第2例は48歳女性でほとんど硬膜外に側頭骨を摘出し得た。術後2年8ケ月の現在非担癌生存している。 内頚動脈を頚動脈管から遊離した状態にすることが錐体尖端部を大きく摘出するために重要であると考えられた。また,耳管への進展が疑われる症例では耳管咽頭口をつけて耳管全体を摘出することが必要と考えられた。
  • ―いかに簡単に効率良く行なうか―
    加納 滋, 行木 英生
    1994 年4 巻2 号 p. 217-227
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     スライド・OHPによる説明では,動きのあるものを時間内に充分説明することが困難になってきている。手術手技の複雑化・高度化に伴い,また教育システムとしてビデオ演題が多くなってきている。特別に高水準の画質が要求されるケース以外では多少の工夫で比較的簡単にビデオを作成できる。撮影にはソニー社製カメラCCD-V800を,編集にはビデオデッキCVD-1000などRCタイムコード対応の8ミリビデオ機器を使用している。さらにマッキントッシュを用い,VISCAプロトコールを使用することにより,ビデオテープ編集をより簡単に効率よく行なうことができる。またデジタル編集についても紹介した。
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