抄録
真珠腫症の治療において通常の外耳道保存術式を行うと高率に再発を起こす。著者等は段階的鼓室形成術を採用し,外耳道保存術式の信頼性を高めるため術式の改善に取り組んでいる。本稿では真珠腫症の手術における基本問題の一つである陥凹ポケット(retraction pocket)及びそれからの再発予防処置を段階手術によってどのように解決しようとしているかを手術手技の面から解説した。第一段階手術では中耳含気腔の確保のために必要な処置を行い,第二段階手術では3つの型の再建手術の一つを個々の症例の中耳含気性に応じて適応することを述べた。また手術顕微鏡下の耳鏡検査とCTによる長期経過観察の重要性を強調した。