環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
2015年シンポジウム
キャッサバの加工および残渣・排水の再資源化における物質フロー分析
金井 亮太大和田 健登藤江 幸一 橘 隆一塚本 真大後藤 尚弘Udin Hasanudin
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 30 巻 2 号 p. 57-66

詳細
抄録

キャッサバからデンプン(タピオカ)を製造する工程で発生する残渣の活用,高濃度排水からの温室効果ガスの排出削減,エネルギーの自給促進などを併せて実現する方策として,残渣の飼料化による肉牛肥育と牛糞尿の堆肥化による農地還元,メタン発酵によるエネルギー回収などを組み込んだリサイクルシステムの構築が有効であると考えられる。このシステムをデザイン・評価するには,タピオカ工場に加えて,上記したシステムを構成する要素となる技術における炭素と窒素に係る物質フローの分析・評価が不可欠である。本研究では,スマトラ島の大小のタピオカ工場において,実測,操業条件の把握とヒアリングに基づいて,物質フローに関する下記の分析結果を得たので報告する。小規模タピオカ工場では,原料キャッサバ1 tから204 kgのタピオカが生産され,原料中有機炭素164 kgの内訳はタピオカに71.6 kg,キャッサバ搾り滓(以下,オンゴック)に40.4 kg(24.6%),排水に46.7 kg(28.5%)であった。肥育牛の体重を200 kg増加するためのオンゴック給餌量は有機炭素基準で204 kgであり,キャッサバ5 tのオンゴック量に相当する。併用する飼料を含めて,給餌中の有機炭素は371 kg,窒素は18.3 kgであり,糞尿中ではそれぞれ275 kgおよび14 kgであった。ラグーンでは原料キャッサバ1 t加工時の排水から約6.9 m3のメタンが発生すると見積もられた。大規模タピオカ工場では,原料キャッサバ1 t加工時のタピオカ生産量は190 kgであり,原料中有機炭素164 kgの行方はタピオカに66.7 kg,オンゴックに35.6 kg,排水に33.7 kgであった。この排水はパイナップル工場排水と混合されてUASB方式でのメタン発酵により,COD容積負荷が6.5 kg-COD/m3・日の条件下でメタン収率は約280 L/kg-CODであった。

著者関連情報
© 2017 公益社団法人環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top