2006 年 75 巻 2 号 p. 154-160
アジサイ (Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser.) の額咲き型と手まり咲き型の花序構成並びに発達過程の比較を行った.本研究では,‘Blue Sky’ の挿し木株を額咲き型株,‘Blue Sky’ から発生した芽条変異枝の挿し木株を手まり咲き型株として用いた.花序の基本構造に関して,額咲き型と手まり咲き型との間に顕著な差異は認められなかった.額咲き型と手まり咲き型の唯一の差異は,頂花付近の上位節において認められた.額咲き型では上位節においても高次花序が着生するのに対し,手まり咲き型では装飾花が着生していた.花序の基本的な発達パターンについて,額咲き型と手まり咲き型に大きな違いは認められなかった.花序原基は,対生に腋芽原基を連続的に形成した後,頂花を形成した.頂花は,小がく花として発達した.腋芽原基は基本的に高次花序として発達した.しかし,手まり咲き型では,頂花付近の腋芽原基は装飾花に分化した.以上の結果から,額咲き型から手まり咲き型の変異は,頂花付近の上位節において高次花序が装飾花に置き換わる変化であることが明らかとなった.