2006 年 75 巻 2 号 p. 191-198
常緑性ツツジとキレンゲツツジとの交雑におけるクルメツツジの種子親としての有効性について,生存可能な実生数/交雑花(交雑能力)に影響する主な原因の特定および生存可能な実生が得られる種子親の特性について検討した.クルメツツジ 39 品種に対して,キレンゲツツジ 1 個体から採集した花粉を交雑した.実施した 39 交雑中 26 交雑から播種 2 年後に生存可能な実生は得られなかった.残りの 13 交雑について,生存可能な実生数/交雑花の値は 0.2~23.2 の範囲にあった.これらの結果からクルメツツジにはキレンゲツツジとの交雑能力に品種間差が存在することが明らかとなった.ステップワイズ法および Bayes プロットから,花粉管の胚珠への貫入率(受精率)および生存可能な実生数/白子以外の実生数(生存率)が交雑能力に強い影響を与えた.モチツツジおよびキシツツジと同じ葉面形態特性を有するクルメツツジ品種を用いた組合せでは,生存率が高く,交雑能力に優れた.本試験からキレンゲツツジとの交雑能力に優れた品種がクルメツツジに存在することが示唆された.