園芸学会雑誌
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菠薐草の品種改良に關する研究
第2報 性表現と因子的説明に就て
杉本 嘉美
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1948 年 17 巻 1-2 号 p. 77-83

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抄録
菠薐草の品種改良に當り, 性の表現機構を明かにする目的を以て, 昭和18年以降禹城を材料として, 之に種々の性的表現の異る組合せを作り, 環境を利用した性因子の基礎的調査を行つた。
1. 春播に於で間性自殖1囘及び2囘つ表現について考察すると, 次代は何れも間性 constant を示したが, その花型の表現に關しでは種々の相違が見られ, この花紛を雌株に配したる翌代は明かに自殖1囘及び2囘のものに顯著なる雌性化の差を生ぜしめて, 間性自殖の繼續は因子的に pure linage に働いていることが考察された。亦自殖2囘にても或る個體を雌に配した場合に於て自殖1囘の場合と同樣の表現をなすものもあつたが, これは自殖の形式より推して當然環境雌性中間性個體の間性表現と想像され, これが enviroment にて發現した場合後代は, 間性 constant と, 環境雌性中間の separate が出來て, これらは更に間性の自殖を繰返せば漸次 pure linage に働くものと考察された。
2. 雌, 雄の表現については遺傳的に二樣の環境に支配されぬ雌, 環境に支配され易き雌の2種を作りて, 雄型相互間の性表現關係を調査したるところ, これら雌, 雄, 間性間には相等しい2種の量的形質の異る因子の存在が假定せられて, これが環境にょりて表現を異にしているが如く考察された。
3. 以上の雌, 雄, 間性等の表現に關し之を因子的に説明すると,
雌株には 雌性因子 (ZZXX), 環境雌性中間性因子 (ZzXX)
雄株には 雄性因子 (zzXY), 環境雄性中間性因子 (ZzXY)
間性には 雌性間性因子 (zzXX), 雄性間性因子 (ZZXY)
の六つの樣式が考えられ, 環境因予は同型配偶子の授精の場合は環境の總べてに働き, 異型配偶子にありては半數が環境に働く能力を有していると假定し得られる
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